1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ニキータ
  4. 『ニキータ』フランス映画の伝統を汲み、傑作となりえたリュック・ベッソンの分岐点
『ニキータ』フランス映画の伝統を汲み、傑作となりえたリュック・ベッソンの分岐点

© 1990 Gaumont (France) / Cecchi Gori Group Fin. Ma. Vi -srl

『ニキータ』フランス映画の伝統を汲み、傑作となりえたリュック・ベッソンの分岐点

PAGES


ベッソンのミューズ、そして魅力的な男たち



 とはいえ、ニキータにも感情はあり、精神的な脆さゆえに頻繁に涙を流す。独房に連行されたとき、レストランで殺人を命じられたとき、極秘ミッションのさなかにマルコに愛を告げられたとき、そしてミッションの非情すぎる面を目にしたとき……。日本での劇場公開時、本作には“泣き虫の殺し屋”というキャッチコピーが付けられていたが、これは上手いコピーだ。


 演じるアンヌ・パリローは当時、ベッソンの私生活でのパートナーでもあった。ゴダール作品におけるアンナ・カリーナ、フランソワ・トリュフォー作品のファニー・アルダン、レオス・カラックスのジュリエット・ビノシュ。フランス映画の鬼才とミューズのような関係が、当時のベッソンとパリローの間にも脈づいていた。本作がロマンチックな作品となったのは、それとは無縁ではないだろう。



『ニキータ』© 1990 Gaumont (France) / Cecchi Gori Group Fin. Ma. Vi -srl


 ニキータを愛する男たちを演じたふたりの男も印象に残る。マルコ役のジャン=ユーグ・アングラードは『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』でも草食男子役を演じていたが、本作でもその存在が光り、優しさにあふれる個性で人気を博す。対して、ボブ役のチェッキー・カリョは寡黙な大人の男。ミッションに対して冷徹で、彼女への思いを押し殺している空気を体現。彼らが対峙するラストシーンは余韻とともに忘れ難いものとなった。


 ベッソン作品の常連俳優で忘れてはいけないのがジャン・レノ。彼が本作で演じた“掃除人”と呼ばれる殺し屋が、ベッソンの次作『レオン』(94)の主人公のヒントになったのは有名な話。また、『最後の戦い』以来、すべてのベッソン作品に出演してきたジャン・ブイーズは大使館員役を演じているが、撮影終了後に世を去った。エンドクレジットの最初に記されたとおり、本作は彼に捧げられている。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ニキータ
  4. 『ニキータ』フランス映画の伝統を汲み、傑作となりえたリュック・ベッソンの分岐点