(c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Väst, Pando & Mutante Cine
『MONOS 猿と呼ばれし者たち』地獄のような神話世界によって問う人間の暴力性
2021.11.11
過酷な撮影環境が生み出した成果
前半の山岳地帯の撮影はコロンビアのチンガザという国立公園で行われた。ここは標高が4千メートルにもなるため、空気も薄く、寒さと不安定な気候はスタッフとキャストを心身両面から追い込んでいった。
「人里離れた場所と空気の薄さのため、キャストとスタッフ全員が普段とは違う精神状態になり、映画の世界に没入する感覚になりました」
『MONOS 猿と呼ばれし者たち』(c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Väst, Pando & Mutante Cine
さらに、後半の撮影も都市部から完全に隔絶されたジャングルの奥深くで4週間近くかけて行った。キャスト、スタッフとも極限状況の中での撮影だったという(監督は撮影中に倒れ病院に担ぎ込まれた)。
そうした環境に映画製作を追い込むことで、ランデス監督は劇映画的なウソを巧妙に避けた。文明から隔絶された神話的世界に置かれた少年少女たちが、その暴力性をどのように発現させ、その小さな社会はいかに崩壊していくのか、その過程を「実験」して観察するかのように追うことで本作を構築していったのだ。