(c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Väst, Pando & Mutante Cine
『MONOS 猿と呼ばれし者たち』地獄のような神話世界によって問う人間の暴力性
2021.11.11
『地獄の黙示録』を乗り越える問いかけ
本作が『地獄の黙示録』にどこか似ていると感じるのは、そんな極限状態の中で撮影された制作過程が両作に共通しているからかもしれない。
『地獄の黙示録』は、フィリピンのジャングルの中で相次ぐトラブルに見舞われたことで制作が難航。コッポラ監督が現場で脚本を書き換えながら映画を撮影せざるをえなかった。そのためか、映画としては歪だが、文明社会から隔絶された環境で発露する暴力衝動が、異様な迫力を持って見るものに迫る作品となった。そんな『地獄の黙示録』は、すべての任務を終えた主人公のウィラード(マーティン・シーン)がジャングルの奥地から文明社会に戻るため、川を下り始めるところで物語が終わる。その結末の意味するところは明確ではなく、観客にゆだねられている。
『MONOS 猿と呼ばれし者たち』(c) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Väst, Pando & Mutante Cine
一方の『MONOS 猿と呼ばれし者たち』も、少年少女たちが川を下ることで、終局を迎える。しかし本作は、『地獄の黙示録』が発しえなかった問いを明確に描く。人間は、社会の中で自らの暴力性を飼いならし、やがては平和へと至ることができるのか?と。
この愚直にして深甚な問いを発するため、ランデス監督は若者たちと暴力の溢れる神話世界で苦闘し、本作を実現したに違いない。
参考/出典:『MONOS 猿と呼ばれし者たち』劇場用パンフレット
取材・文: 稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。
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『MONOS 猿と呼ばれし者たち』
10月30日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
配給:ザジフィルムズ
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