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『続・夕陽のガンマン』3人のならず者が宝探しに奔走するピカレスク・ロマン

(c)Photofest / Getty Images

『続・夕陽のガンマン』3人のならず者が宝探しに奔走するピカレスク・ロマン

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オープニングから炸裂する、セルジオ・レオーネ作劇術



 映画の冒頭から、我々は「レオーネ節」を堪能することができる。いきなり登場するのは、広大な荒野をバックにした殺し屋の極端なクローズアップ。お世辞にもフォトジェニックとは言い難い“おっさん顔”を画面いっぱいに映し出すことで、『続・夕陽のガンマン』は名もなき男たちの人間ドラマであることを高らかに宣言する。


 そして、遠方からゆっくりと馬に乗ってやってくる、豆粒のような二人の男のシルエット。先ほどとは打って変わって、完全に人間が風景の一部に埋没している。「そんな人間の営みも、大きな歴史の中ではごく小さな事象にしか過ぎないのだ」と云わんばかりの演出ぶり。極大なものと極小なものを、カットバックで同時に表現してしまうのが、レオーネ流作劇術なのである。


 しかもこの映画、開巻10分はセリフはナシ。こう説明すると、とてつもなくストイックで硬質な映画と思われそうだが、さにあらず。『続・夕陽のガンマン』は、セルジオ・レオーネのフィルモグラフィーの中でも、ずば抜けてユーモラスな作品に仕上がっている。もちろんその理由は、テュコを演じるイーライ・ウォラックの存在だ。



『続・夕陽のガンマン』(c)Photofest / Getty Images


 思い返してみると『荒野の用心棒』は、イーストウッド演じる流れ者のガンマンにフォーカスを当てた、一匹狼の物語だった。そして『夕陽のガンマン』は、イーストウッド演じる名無しの男と、リー・ヴァン・クリーフ演じるモーティマー大佐がつかの間の友情を結んで、ギャングたちを一掃する物語。レオーネ映画において、イーストウッドは寡黙なアウトローを、ヴァン・クリーフは冷酷無比なプロフェッショナルを体現してきた(要は、どっちも隠キャである!)。だから彼の映画には、叙情的でありながらもどこか乾いた空気が漂っていた。


 だが、『続・夕陽のガンマン』で登場する”第三の男”イーライ・ウォラック=テュコは、そんな乾いた空気を一気に高温多湿へと変えてしまう。狡猾で利己的だけど、どこか憎めない人たらし。『ドン・キホーテ』の従者サンチョを思わせる、道化的キャラクター。本作の実質的な主人公はイーストウッドではなく、間違いなくウォラックである。



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