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『続・夕陽のガンマン』3人のならず者が宝探しに奔走するピカレスク・ロマン

(c)Photofest / Getty Images

『続・夕陽のガンマン』3人のならず者が宝探しに奔走するピカレスク・ロマン

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終焉を迎えた“偉大なるマカロニ・ウェスタンの時代”



 その一方で、クリント・イーストウッドは『続・夕陽のガンマン』に不満タラタラ。彼は脚本を読んで、映画の実質的な主人公がテュコであることを見抜いていた。「役得なのはイーライ・ウォラックの方じゃないか」と、契約書へのサインを拒む始末。レオーネは怒りを爆発させ、「明日にでもお前の代わりを連れてくる!」と言い放ったとか。最終的に25万ドルの出演料で同意したものの、交渉に時間を要して撮影の開始が遅れてしまう。


 やっと主役がスタジオに現れても、イーストウッドとレオーネの間には修復しがたいシコリが残っていた。激しい口論にこそならなかったものの、レオーネの完璧主義と妥協なき要求に、イーストウッドはすっかり辟易していた。非喫煙者のイーストウッドにとって、葉巻をやたら吸わされるのは地獄以外のなにものでもなかったし、撮影に3ヶ月も拘束されるのも我慢ならない。過酷なロケのために、熱中症になることもしばしばだった。


 案の定というべきか、セルジオ・レオーネとクリント・イーストウッドのコラボレーションは、本作を持って最後となる。2人の “偉大なるマカロニ・ウェスタンの時代”は、遂に終焉を迎えたのだった。



『続・夕陽のガンマン』(c)Photofest / Getty Images


 そして月日は流れ、1988年。自らが監督した『バード』(88)をカンヌ映画祭に出品中だったイーストウッドのもとに、意外な人物から連絡を受ける。


「彼(セルジオ・レオーネ)が突然電話してきたんだ。一緒に昼食をとって、実に久しぶりに、静かに語り合った。とてもいいひとときを過ごせたので、その日の晩にまた会って食事をすることにした。(中略)セルジオは、すっかりくつろいでいて、忘れがたい晩になった。(中略)それから何ヶ月かして、彼は亡くなった。あの晩のことは、彼なりの、わたしへの別れの挨拶だったんだろうと思った」(クリント・イーストウッドへのインタビューより引用**)


 イーストウッドとレオーネの映画を愛する者として、このエピソードは感涙モノである。わずかな時間だったとはいえ、2人は老いて旧交を温めていたのだ。そして1992年、イーストウッドは“最後の西部劇”と銘打った『許されざる者』を発表。師と仰ぐドン・シーゲルと共に、本作はセルジオ・レオーネに捧げられている。


*「セルジオ・レオーネ―西部劇神話を撃ったイタリアの悪童」(鬼塚大輔 訳、フィルムアート社)

**「孤高の騎士クリント・イーストウッド」(石原陽一郎 訳、フィルムアート社)



文:竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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