映し鏡としてのエターナルズ
エターナルズとは、人間を守るために生み出された不死の宇宙種族であり、常に人間を見守り、導く存在。あたかも神の如きスタンスで人間を俯瞰で見つめているが、そんなエターナルズこそが非常に人間味あふれる存在となっているのが面白い。今回の映画のエターナルズは、原作から改変されて、人種や性別、性的指向から身体的特徴まで、あらゆるメンバーで構成されている。そこの変更点は表現として歓迎されつつも、まさにその多様性が人間そのものを象徴している気がしてならない。
エターナルズは、血の繋がらない家族でもあり、お互いに尊重し助け合いながら生きているが、考え方の違いから対立し、その家族から離脱することもある。恋愛をすることもあれば、苦悩し嫉妬を覚え、そして裏切り、争いを引き起こす。その姿は、轍を踏み続ける愚かな人間にそっくりだ(人間の愚行として広島の原爆投下も描かれる)。最初から憎しみあっているわけではないのに、様々な理由から対立が始まり悲劇を引き起こす。エターナルズはまさに人間の映し鏡として描かれていく。
『エターナルズ』(c)Marvel Studios 2021
映画『エターナルズ』は、現代に生きる我々自身の姿を、エターナルズを通してスクリーンに映し出す。その意味では、本作はまさに新たな神話として生まれた物語とも言えるだろう。そう考えると、7,000年にわたり存在してきたがゆえ、エターナルズ自身が神話として語り継がれているというエピソード(スプライトの創作)は、ある種のメタフィクションだとも言える。
ブロックバスターであることを最大限に生かして、伝えなければいけないこと。それが、新たな神話が示唆することであり、MARVELが目指す新たな極北なのではないだろうか。クロエ・ジャオに『エターナルズ』を任せた理由もそこにある気がしてならない。
なおクロエは『ブラック・ウィドウ』(21)の監督候補にもなっていた。すでに完成している同作を観た後だと違和感がある組み合せかもしれない。だが一方で、自立する女性たちを中心に描いた『ブラック・ウィドウ』は、クロエには合った題材だとも思える。『エターナルズ』を観た後では、クロエ版『ブラック・ウィドウ』にも俄然興味が湧いてくるのだ。
参考資料:『エターナルズ』劇場用パンフレット
文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
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『エターナルズ』
11月5日(金) 全国公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021