クロエ・ジャオを”活かす”MARVEL
人類の夜明けから、宇宙の誕生にまで言及する『エターナルズ』は、途方もなく壮大で深遠な物語。だがそれは一方で、風呂敷を広げた荒唐無稽な内容になる危険性も孕んでいる。その世界を説得力のあるものにするためには、『ガーディアンズ・ギャラクシー』や『マイティ・ソー バトル・ロイヤル』のように、あえてポップに仕立てる方法もあったかもしれない。しかし本作は、その壮大で深遠な内容に真正面から取り組み、見事にその世界を作り上げた。
前述した通り、クロエの映画作りは、これまでのMARVEL作品とは真逆のアプローチでありながらも、『エターナルズ』でもその力を遺憾無く発揮している。むしろそのアプローチが『エターナルズ』の世界を支えていると言ってもいい。『ザ・ライダー』や『ノマドランド』で見せてくれた雄大な景色と自然光は、『エターナルズ』でも効果的に生かされており、壮大で深遠な物語を説得力をもって具現化する。
『エターナルズ』(c)Marvel Studios 2021
だがその撮影を可能としたのは、MARVELならではのビッグバジェットと精鋭スタッフによるもの。プロダクション・デザイナーのイヴ・スチュワートとクロエはかなり早い段階から話し合い、可能な限り実写での撮影を目指したという。つまり、CGでの合成は極力行わず、実際にあるものとしてセットを構築。そこにクロエら撮影チームが入り、彼女の特徴のひとつでもある「その場にあるものを切り取る」撮影を可能とさせたのである。
極端な言い方をすれば、「エターナルズ」の世界を実際に作ってしまい、その中にクロエを入れて好きなように撮らせたとも言える。もちろん部分的にCGを使ってはいるが、MARVELやクリストファー・ノーランの映画のような規模でなければ、なかなか実現できないアプローチだろう。