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ドキュメンタリー映画『BELUSHI ベルーシ』 とあわせて知っておきたい”もう一つの”ベルーシ伝説
2021.12.15
『ゴーストバスターズ』の一人目になるはずだった男
映画『BELUSHI ベルーシ』では、破天荒かつ予測不能、それでもみんなから愛され、しかし誰よりも不安を抱えていた彼の内面を、関係者の証言や妻にあてた手紙などから紐解いていく。だが、本稿で映画の内容をなぞるつもりはない。ここで述べたいのはむしろ「映画に収まり切らなかった逸話」だ。
例えば、『ゴーストバスターズ』(84)に関すること。そのくだりは『BELUSHI ベルーシ』でも少しだけ触れられる。晩年のベルーシが悩み、苦しんでいた時、親友ダン・エイクロイドは「いま君のために脚本を書いてるから、もう少しがんばれ」と励ます。その脚本こそ『ゴーストバスターズ』だった…。
『ゴーストバスターズ』予告
もう少し詳しく解説しておこう。当時、エイクロイドが執筆していた初稿でベルーシに当て書きされていたのはヴェンクマン役(ビル・マーレイが演じた)だったとか。ただしこの時点でのストーリーは完成版と随分違っていて、舞台はゴーストが大量出没する未来世界。そこでは幾つものライバル会社が競うようにゴースト退治を行っていて・・・という内容だった。ではこの初稿は、ベルーシの死後、どのような経路を辿ったのか。
まず、執筆済みの80ページの脚本はアイヴァン・ライトマンの手に渡る。それでエイクロイドとライトマンは会って話をして、親交のあったハロルド・ライミスやビル・マーレイも誘ってみようよ、という流れになっていく。話の内容も、未来から現代へ。アイヴァンの助言をもとに、もっと”リアリティに富んだ内容”へとシフトしていった。
主演の三人は(ついでに言えば、ベルーシも)シカゴの即興コメディ劇団「セカンド・シティ」の出身で、エイクロイドとマーレイはSNLメンバーでもある。なおかつライトマンとマーレイやライミスらは「ナショナル・ランプーン」がらみの作品や、映画『パラダイス・アーミー』(81)でも仕事をしたことのある仲。短い準備期間にもかかわらず、彼らは持ち前の即興性とチームワークを駆使しながら、独創的な作品世界を作り出していったのである。
もしベルーシが生きていたらどうなっていただろう。映画の中心には親分風を吹かせる彼の存在がデーンとそびえ立ち、召集されるメンバーも全く異なり、もっと破壊的で荒唐無稽な『ゴーストバスターズ』が生まれていただろうか。
ちなみに、本編に登場する緑色ゴーストは生前のベルーシがモデルなのだとか。死んでもなお彼はちゃっかり出演を果たしているのである。