ポップカルチャーのアイコン化した多彩な魅力
映画『バイオハザード』が画期的だった点はいくつかあるが、ヒロインアクションというジャンルを切り拓いたことが、まず挙げられる。同作の一年前に、アンジェリーナ・ジョリーが主演を務めた、これまた人気ゲームの映画化である『トゥームレイダー』(01)に、ミラは大きな刺激を受けたという。「長年にわたり、女性がアクションの主演を務める映画はヒットしないと言われてきた。しかし、『トゥームレイダー』も『バイオハザード』もそうだが、ゲームの分野ではそんな定説を覆してヒットを飛ばしてきた。もう、ミラがブルース・ウィリスの隣で怯えている必要はない。彼女が銃を持って戦い、男性が怯えている、そんな映画が作られてもいい時代だ」とはアンダーソンの弁。
そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、ゾンビ映画というジャンルを、本作が改めて表舞台に押し上げたことだ。誤解を恐れずに言えば、1990年代のこのジャンルは冬の時代だった。この時期にもゾンビ映画は作られ続けていたが、その多くはホラー・ファンに向けた低予算映画であり、それ以外の映画ファンにアピールするには、『永遠に美しく』(92)のようにコメディに走るしかなかった。
『バイオハザード』(c)Photofest / Getty Images
しかし映画『バイオハザード』の誕生により、ゾンビ映画は息を吹き返す。ロメロの『ゾンビ』をリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)は好評に迎えられ、監督のザック・スナイダー(『300<スリー・ハンドレッド>』06)、脚本のジェームズ・ガン(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』14)といった新たな才能を輩出。一方で、ゾンビ映画のパイオニアでありながら長らくスランプに陥っていたロメロは、同作の降板をバネにして、20年ぶりにゾンビ映画を監督。この『ランド・オブ・ザ・デッド』(05)は興行的にも成功する。
さらに小説の分野にもゾンビが登場するようになり、ゾンビは00年代を通じてカルチャーアイコンへと発展するが、その原点として『バイオハザード』が存在していることは踏まえておくべきだろう。