1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ガス燈
  4. 『ガス燈』「ガスライティング」の語源となったサスペンス映画が、名作となった理由
『ガス燈』「ガスライティング」の語源となったサスペンス映画が、名作となった理由

(c)Photofest / Getty Images

『ガス燈』「ガスライティング」の語源となったサスペンス映画が、名作となった理由

PAGES


イングリッド・バーグマンの熱意で実現した企画



 この映画を見れば、どのように一人の人物が洗脳されていくのか、家庭内で起こる精神的虐待がいかに恐ろしいものかがよくわかる。監督は、『素晴らしき休日』(38)『フィラデルフィア物語』(40)といった最高のロマンチックコメディを数々手がけ、本作の後、『スタア誕生』(54)や『マイ・フェア・レディ』(64)といった誰もが知る名作を残したジョージ・キューカー。


 主演は、イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエ。ポーラを救うキャメロン警部役はジョゼフ・コットン。また生意気なメイドのナンシーを演じたのは、テレビドラマ『ジェシカおばさんの事件簿』でもよく知られるアンジェラ・ランズベリー。当時ランズベリーは演技経験のない新人だったが、即座にその魅力を見出したキューカーは、上層部を説得し彼女を出演させた。



『ガス燈』(c)Photofest / Getty Images


 この映画は、イングリッド・バーグマンのハリウッドにおける代表作の一つであり、初のアカデミー主演女優賞を受賞した作品としてよく知られている。実は、彼女が主演に決まるまでにはちょっとした紆余曲折があった。元々、バーグマンはニューヨークで上演された本作の舞台(劇のタイトルは「Angel Street」)に感激し、この映画化作品にぜひとも出演したいと切望していた。だがここで一つ問題が持ち上がった。スター同士の共演に起こりがちなクレジット問題だ。


 バーグマンは1939年にスウェーデンからハリウッドに渡り、『カサブランカ』(42:マイケル・カーティス監督)で大きな成功を収めていたが、相手役として打診されたシャルル・ボワイエも『邂逅』(39:レオ・マッケリー監督)などで知られるスター男優。ボワイエ側は、自分の名前が先にクレジットされなければ出演できないと主張してきのだ。一方バーグマンの出演権を管理していたプロデューサーのデヴィッド・O・セルズニックは、彼女の名前が先に出なければ出演は許さないと応じた。両者の面子をかけた駆け引きはこじれ解決法は見つからない。だがどうしてもこの映画に出演したかったバーグマンは、自分を二番手にするよう会社を説得する。セルズニックは彼女の希望を渋々受け入れ、シャルル・ボワイエを先にすることでクレジット問題は無事解決した。バーグマンの熱意がなければ二人の共演は実現せず、この名作は生まれなかったかもしれない。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ガス燈
  4. 『ガス燈』「ガスライティング」の語源となったサスペンス映画が、名作となった理由