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『ガス燈』「ガスライティング」の語源となったサスペンス映画が、名作となった理由

(c)Photofest / Getty Images

『ガス燈』「ガスライティング」の語源となったサスペンス映画が、名作となった理由

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ガスライティングを題材にした映画



 身近な人物の言動によって、自分を疑いはじめ心理的に追い詰められる女性の恐怖。この題材をたびたび自作に取り入れたのは、キューカーよりもサスペンスの巨匠ヒッチコックだろう。最も有名なのは、夫の亡くなった前妻レベッカの影に怯える女性を描いた『レベッカ』(40)。ここでは夫ではなく前妻の使用人だったダンヴァース夫人が、ヒロインを心理的に虐待する。他にも、『レベッカ』のようなメロドラマとは異なるものの、『バルカン超特急』(38)では主人公が周囲の人たちから自分の記憶が間違っていると思い込まされ、『ダイヤルMを廻せ!』(54)では、夫の策略によって、何も知らない妻が殺人犯に仕立て上げられる。


『レベッカ』予告


 ヒッチコック以外にも、ガスライティング的題材を扱った興味深い作品はいくつもある。『眠りの館』(48:ダグラス・サーク監督)では、夢遊病を患うようになった妻が、自分は精神的な病にかかっており、そのために記憶が混乱するのだと信じ込み絶望していく。だがその裏では、優しいはずの夫が薬と催眠術を使って彼女を操っていた。催眠術を用いて女性を操る男の話としては、『疑惑の渦巻』(49:オットー・プレミンジャー監督)も挙げられる。


 近年では、『ガール・オン・ザ・トレイン』(16:テイト・テイラー監督)で、夫による妻へのガスライティングが謎解きの鍵として使われた。エミリー・ブラント演じるアルコール依存症に苦しむ女性が、ある事件の真相を探すうち、かつて自分が受けていた虐待に気づき始める。ミシェル・ファイファーとハリソン・フォードが夫婦役を演じた『ホワット・ライズ・ビニース』(00:ロバート・ゼメキス監督)もこの題材を応用した作品といえるだろう。また有名な『ローズマリーの赤ちゃん』(68:ロマン・ポランスキー監督)のように、主人公がありえない妄想に取り憑かれていると観客まで騙しにかかる場合もある。『透明人間』(20:リー・ワネル監督)は、まさにこの形式を変奏させたサスペンスドラマだ。




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