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『パリ13区』ジャック・オディアールと二人の女性映画作家が描いたのは、正統派のロマンティック・コメディ

© ShannaBesson ©PAGE 114 - France 2 Cinéma

『パリ13区』ジャック・オディアールと二人の女性映画作家が描いたのは、正統派のロマンティック・コメディ

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二人の女性映画作家との協働がもたらしたもの



 変わったのは舞台だけではない。完全に独立した3編をひとつの物語にまとめるために、脚色においては大胆なアレンジがほどこされた。本来出会うはずがなかったエミリーとノラは、カミーユを通してゆるやかな三角関係を形成し、ノラと“アンバー・スウィート”の出会いにはその後の展開が追加された。トミネの原作が持つテーマを引き継ぎながらも、新たな出会いが追加され、陰鬱さが強く残るラストは大幅に書き換えられた。


 『預言者』(09)や『ゴールデン・リバー』(18)をはじめ、これまでのオディアールの監督作では、トマ・ビデガンが脚本に多く携わってきた。本作ではビデガンに代わり、『トムボーイ』(11)、『燃ゆる女の肖像』(19)の監督で脚本家としても活躍するセリーヌ・シアマと、『アヴァ』(17、日本未公開)の監督でありアルノー・デプレシャンの『イスマエルの亡霊たち』(17)、『ダブル・サスペクツ』(19)の脚本にも参加したレア・ミシウスが参加している。



『パリ13区』© ShannaBesson ©PAGE 114 - France 2 Cinéma


 女性の性的な欲望に焦点をあて、女性同士の恋愛を含んだ物語をつくるうえで、シアマとミシウスの果たした役割は大きい。セックスについてあけすけに語り合い、街を闊歩するエミリーと女友達。ノラと“アンバー・スウィート”の、パソコン画面を介した深夜まで続く親密な会話。こうした女性たちの姿は、いわゆる「男の映画」の印象が強いオディアール映画ではかつて見られなかった光景だ。




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