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『パリ13区』ジャック・オディアールと二人の女性映画作家が描いたのは、正統派のロマンティック・コメディ

© ShannaBesson ©PAGE 114 - France 2 Cinéma

『パリ13区』ジャック・オディアールと二人の女性映画作家が描いたのは、正統派のロマンティック・コメディ

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目指したのは正統派ロマンティック・コメディ



 オディアールは、エミリー役を演じたルーシー・チャンに、ロブ・ライナー監督『恋人たちの予感』(89)のヒロインをイメージするように指示したという。たしかに、反発しあいながらもなぜか離れられないエミリーとカミーユの関係は、メグ・ライアンとビリー・クリスタルの姿と重なりあう。だとすれば、『パリ13区』が目指したものは明らかではないか。セックスとおしゃべりに満ち、最後は正しい相手との恋の成就に導かれる物語。まさにロマンティック・コメディの定番スタイルだ。街からパリの雰囲気を消し、いつになく女性たちの会話シーンに力を入れたのも、ハリウッドでつくられる正統派ロマンティック・コメディを目指したため、と考えれば合点がいく。



『パリ13区』© ShannaBesson ©PAGE 114 - France 2 Cinéma


 そもそもオディアールは、一見異質と思える者たちが出会い、正しい相手と結ばれるまでの物語をたびたび描いてきた。まったく別の世界で生きてきた男女の交流を描いた『リード・マイ・リップス』(01)や『君と歩く世界』(12)はもちろん、刑務所での青年の立身出世ストーリーである『預言者』もまた、運命的な出会いと関係の成就をめぐる物語だ。主人公は、さまざまなタイプの男たちと出会い、親密な関係を築きながら、最終的には正しい相手を選びとる。内戦下のスリランカからフランスに逃げてきた人々の苦闘を描いた『ディーパンの闘い』(15)では、疑似家族として出会った者たちが本当の家族として互いを選び直す。アメリカの西部時代を背景にした『ゴールデン・リバー』は、追う者/追われる者が惹かれあい、つかのまのユートピアを築く。題材が何であれ、形式はいつもラブスートーリーなのだ。


 こうして『パリ13区』は、ロマンティック・コメディを目指して突き進む。エミリーもカミーユもノラも、他人とうまく関係をつくれず、孤独のなかで生きている。彼らは誰かと本物の関係を築こうともがいては、自分が誰と結ばれるべきなのかを見失い、運命の相手と近づく方法を間違え、自分のセクシュアリティをすら見誤る。だが心配は無用だ。たくさんのセックスとおしゃべりを経由し、やがて最高のハッピーエンドが訪れる。



文:月永理絵

映画ライター、編集者。雑誌『映画横丁』編集人。『朝日新聞』『メトロポリターナ』『週刊文春』『i-D JAPAN』等で映画評やコラム、取材記事を執筆。〈映画酒場編集室〉名義で書籍、映画パンフレットの編集も手がける。WEB番組「活弁シネマ倶楽部」でMCを担当中。 eigasakaba.net 




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作品情報を見る



『パリ13区』

4月22日(金)、新宿ピカデリーほか全国公開

配給:ロングライド

© ShannaBesson ©PAGE 114 - France 2 Cinéma

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