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『マラソンマン』古典演技 VS. メソッド演技、新旧アクターの火花散る対決

(c)Photofest / Getty Images

『マラソンマン』古典演技 VS. メソッド演技、新旧アクターの火花散る対決

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“死の天使”ヨーゼフ・メンゲレ博士



 そんな最凶ヴィランのモデルとなったのは、実在の人類生物学者ヨーゼフ・メンゲレ博士。1937年にナチスに入党、1938年に親衛隊(SS)に入隊。1943年にアウシュヴィッツ強制収容所に配属されると、囚人たちに対して非人道的な人体実験を繰り返し、“死の天使”と恐れられた。


 ドイツ降伏後は1949年に南米へ逃亡。偽名を使って各地を転々とし、国際捜査の手を逃がれ、姿を完全にくらましたことから、彼の存在は伝説化する。「死の接吻」や「ローズマリーの赤ちゃん」の著作で知られるアイラ・レヴィンが、この“死の天使”をモチーフにして書き上げた小説が、「ブラジルから来た少年」。ナチスの残党と共に悪魔的な計画を発動させるメンゲレ博士と、それに対抗するナチス・ハンターとの戦いを描いた、サスペンスフルな物語だ。


『ブラジルから来た少年』予告


 「ブラジルから来た少年」は、1978年にフランクリン・J・シャフナー監督の手によって映画化されている。メンゲレ博士を貫禄たっぷりに演じるのは、『ローマの休日』(53)や『アラバマ物語』(62)で知られるグレゴリー・ペック。理知的な正義感のイメージが強い彼に、このキャスティングはやや意外だった。そして、ナチス・ハンターのリーベルマン役を演じているのは、ローレンス・オリヴィエ。そう!彼は『マラソンマン』ではメンゲレ博士をモデルにした悪役、そして『ブラジルから来た少年』ではそのメンゲレと対峙する戦犯追及者と、真逆のキャラクターを演じているのだ(そして、どちらの作品でもアカデミー賞にノミネートされている)。


 これも、想像以上にオリヴィエが“長生きし過ぎた”結果によるものだろう。『マラソンマン』は、彼にとって遺作になるはずだったのである。




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