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『引き裂かれたカーテン』ヒッチコックがスパイ・スリラーに挑んだ意欲作 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『引き裂かれたカーテン』ヒッチコックがスパイ・スリラーに挑んだ意欲作 ※注!ネタバレ含みます。

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ポール・ニューマンとの対立



 実はヒッチコックにとって、『引き裂かれたカーテン』のキャスティングは望んだものではなかった。当初マイケル役にはケーリー・グラント、サラ役にはエヴァ・マリー・セイントが候補として挙がっていたという。要は『北北西に進路を取れ』のコンビが、そのまま本作でも主演を務める可能性があったのだ。


 しかし、すでに還暦を迎えていたケーリー・グラントは「年を取りすぎている」という理由でオファーを固辞。ユニバーサル・ピクチャーズからの要請もあり、『ハスラー』(61)で一躍スター俳優となったポール・ニューマンが起用されることになる。ちなみに『サイコ』のノーマン・ベイツ役で知られるアンソニー・パーキンスが、某インタビューで「ヒッチコックは自分をマイケル役に起用したかったが、スタジオの反対にあって実現しなかった」と発言している。え、マジっすか?にわかに信じ難い、ヤバすぎるキャスティングなり。



『引き裂かれたカーテン』(c)Photofest / Getty Images


 結局エヴァ・マリー・セイントも出演が叶わず、ヒッチコックは『コレクター』(65)でカンヌ国際映画祭女優賞に輝いたサマンサ・エッガーを起用しようとするも、ユニバーサル側の猛プッシュもあって、『メリー・ポピンズ』(64)、『サウンド・オブ・ミュージック』(65)で人気を博したジュリー・アンドリュースがサラ役を演じることに。ポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースというスターを迎えることになったものの、ヒッチコックはこの二人が役にマッチしているとは思えなかった。特に、アクターズ・スタジオでメソッド演技を学んだポール・ニューマンの芝居には、閉口させられることもしばしばだった。


 「わたしの気にいらなかったのは、ポール・ニューマンの演技だ。きみも知ってのとおり、ポール・ニューマンはアクターズ・ステュディオ出身の俳優だ。何も表現していない、いわば中性のまなざしが、わたしには、シーンを編集するために絶対必要だったが、ニューマンはそんな、何も表現しない中性のまなざしで見る演技をいやがった」(*)


 撮影中、4ページにも渡って脚本に対する質問が書かれたメモを受け取ることもあり、ヒッチコックは激怒したという。ケーリー・グラント、ジェームズ・ステュアート、イングリッド・バーグマン、グレース・ケリーといった往年のスターと仕事をしたのは遠い昔。ヒッチコックは新世代のスターと信頼関係を築けぬまま、苦心惨憺しながら撮影を続けていく。




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