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『引き裂かれたカーテン』ヒッチコックがスパイ・スリラーに挑んだ意欲作 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『引き裂かれたカーテン』ヒッチコックがスパイ・スリラーに挑んだ意欲作 ※注!ネタバレ含みます。

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『引き裂かれたカーテン』あらすじ

コペンハーゲンで開催される国際会議に出席すべく、船旅に出た物理学者のマイケル・アームストロング(ポール・ニューマン)と彼の婚約者で助手のサラ・シャーマン(ジュリー・アンドリュース)。途中、マイケルはある文書を受け取り、サラに行く先を偽って単身東ベルリンへ向かう。不審に思った彼女は後を追う。果たしてマイケルは売国奴なのか、科学者を装ったスパイなのか。


Index


ヒッチコック 50本目のスリラー



 いきなり個人的な話で申し訳ありませんが、筆者にとってアルフレッド・ヒッチコックのファースト・コンタクト映画は、『レベッカ』(40)ではなく、『北北西に進路を取れ』(59)でもなく、かと言って『サイコ』(60)という訳でもなく、『引き裂かれたカーテン』(66)だった。中学生の頃に父親がレンタルビデオでこの作品を借りてきて、一緒に観たことを覚えております。


 ヒッチコックは、生涯53本の長編映画を発表してきた。その中で、50本目に当たる『引き裂かれたカーテン』は、決して傑作認定されている訳ではない。むしろヒッチコック晩年期に発表されたこの作品は、巨匠の限界説もささやかれたくらい評判が悪かった。ニューヨーク・タイムズは「哀れなほど特徴のないスパイ映画で、その明らかな理由は、ヒッチコック氏が最も敬遠する陳腐なものを集めた脚本だからだ」と酷評。ロッテントマトの映画批評家によるスコアは65%で、『サイコ』の96%、『北北西に進路を取れ』の97%と比べても段違いに低い。


『引き裂かれたカーテン』予告


 だが少なくとも筆者にとって本作は、ヒッチコックの真髄が詰まった映画だ。冷戦時代の東ドイツにスパイとして潜り込んだ原子物理学者マイケル・アームストロング(ポール・ニューマン)と、婚約者のサラ(ジュリー・アンドリュース)。果たして彼らは無事に脱出できるのか…?サスペンスとは何なのか、観客の感情を揺さぶる演出とは何なのかを、筆者はこの映画を通じて学んだ。そして偉大なるサスペンスの神様に畏敬の念を抱き、彼の作品を追いかけるようになったのである。


 世間的には駄作と呼ばれるものであっても、自分にとってはとびっきり大切で、とびっきり重要な作品というものがある。筆者にとって、『引き裂かれたカーテン』は間違いなくその中の一本である。




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