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『カラー・オブ・ハート』色彩テクニックが示唆するアメリカの分断(後編)

(c)Photofest / Getty Images

『カラー・オブ・ハート』色彩テクニックが示唆するアメリカの分断(後編)

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あらすじ⑤



 バッドが帰宅すると、珍しくメアリー・スーがD・H・ローレンスの小説を読んでいた。彼女はバッドに、「自分は人の10倍はセックスをしているのに、なぜ白黒のままなのか」という疑問をぶつける。バッドは、色とセックスは直接関係していないという仮説を立てる。


 バッドは、手作りクッキーをくれたマーガレットをデートに誘ってみる。するとあっさりOKの返事がもらえた。人生で初デートということで、バッドは有頂天になる。するとテレビの中から電気屋(ドン・ノッツ)が、現実世界に戻るよう命じてくる。彼は、ドラマの内容がすっかり変わってしまったことに怒っていたのだ。バッドはこの命令を拒否し、まだこの世界に残ると宣言する。


 そして迎えた初デートの日。バッドとマーガレットは、車で“恋人たちの水辺”に向かう。すると二人はモノクロのままだが、車に色が付き始め、さらにピンクに染まった満開の桜並木の花びらが舞い散る。到着した“恋人たちの水辺”で寛ぐ若者たちは、すでにカラーになった者も多く、色とりどりの花が咲いていた。


 一方、家を出てあてもなく白黒の町をさまよっていたベティは、ビルの店の窓に色鮮やかなピカソ風の抽象画が描かれていることに気付く。入店してみると、ビルは1人でキャンバスに向かってセザンヌ風の絵を描いていた。ベティがその絵を褒めると、ビルはバッドで借りてきてくれた画集を開き、特にお気に入りだというピカソの「Sleeper near the shutters」を彼女に見せる。ベティはその絵を見て泣いている女性だと解釈し、自分も涙を浮かべる。ビルがその涙を優しく拭き取ると、グレーの化粧がはげてカラーの肌色が現れる。



『カラー・オブ・ハート』(c)Photofest / Getty Images


 夜になり、ジョージが帰宅しても、出迎えもなく夕食もない。家に残っていたメアリー・スーは、ダサい眼鏡を掛けて読書に集中しており、スキップ(ポール・ウォーカー)からのデートの誘いも断ってしまった。


 同じ頃、“恋人たちの水辺”でバッドとのデートを続けていたマーガレットは、彼に渡すために禁断のリンゴをもぎ取る。すると、プレザントヴィルに一度も鳴ったことのない雷鳴が響き、初めての雨が降りはじめる。怯える若者たちを、バッドが安心させた。いまや彼は完全にヒーローだった。だが、ボウリング場に集まった商工会のメンバーは、雨でずぶ濡れになったジョージの姿に驚き、カラーになった住民に対し闘う決意を固める。


 翌朝、雨が止んだプレザントヴィルの町に、美しい虹がかかる。本を読みながら、そのまま寝てしまっていたメアリー・スーが目覚めると、彼女も部屋もカラーになっていた。ベティの肖像画を描いていたビルもカラーになり、店内もすっかり色付いていた。“恋人たちの水辺”で雨宿りしていた若者たちは、マーガレットも含め全員カラーになっていたが、バッド1人だけがモノクロのままだった。



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