異色キャストが織りなす化学反応
キャストには意外性の高いメンバーが勢揃いした。ケイジとの共演シーンは少ないが、ある意味、絆で結ばれたバディとなるジョン・キューザックなどは、もともと出演に関して乗り気ではなかったらしい。でもその渋々感が、かえって作品に面白く作用したように私には思える。また、爬虫類的な艶かしさで驚くべき知的な悪役を創り出したジョン・マルコヴィッチも見ものだ。出演のためにフランスからやってきた彼は、罵詈雑言に満ちた即興性の高い演技で本作になんともいえない妙味を吹き込んだ。
『コン・エアー』(c)Photofest / Getty Images
『ミッション:インポッシブル』シリーズでお馴染みのヴィング・レイムスもいれば、実際に刑務所で暮らした経験を持つダニー・トレホなど、とにかく全員が全員、映画ファンを唸らせるクセモノ揃い。そんな中でも、この映画におけるいちばんのスパイスは誰かと聞かれれば、それはやはり当時から『レザボア・ドッグズ』(92)や『ファーゴ』(96)でニヤリとさせる存在だったスティーヴ・ブシェミだろう。この役は脚本家のローゼンバーグが、友人関係にあったブシェミのためにほぼ書き下ろしたものだとか。独特の拘束具を装着して登場するところなど、まさに『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターを地でいくような異様さで戦慄が走る。
ローゼンバーグによると、ブシェミと少女との交流の場面は「フランケンシュタイン」のモンスターと少女へのオマージュらしい。結果的にこの緊張感がクスッと笑える落とし所へと反転していく流れは、誰もが後から思い返すときいちばん印象に残っているくだりかもしれない。