(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(前編)
2022.12.20
CGキャラクターと人間の共演シーン
パフォーマンス・キャプチャーは、水中だけでなく、陸上においても難題をもたらしていた。それは身体のサイズが異なる、ナヴィと人間の共演である。これは『アバター』にもあったことだが、『WoW』では人間のスパイダーがジェイクたちの家族といっしょに生活しているシーンが多く、スケール合わせが困難を極めた。
そこでまず、両者の歩幅の調整法が考え出された。セットにヒルと呼ぶ傾斜が作られ、“ナヴィ・スケール”と“ヒューマン・スケール”という、それぞれ異なる角度が付けられた。これは、両者が一緒に歩いているシーンなどに用いられている。
また会話する場面では、低身長の俳優の頭に液晶モニターを装着し、スパイダーを演じるチャンピオンの顔を表示する。ナヴィ役の俳優は、そのモニターを見ることで、目線を揃えて演じることが可能になった。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
さらに屋外で人間役の俳優を撮影する場合は、スポーツ中継などに用いられる“ケーブルカメラシステム”(スカイカムやスパイダーカムのようなもの)を使用した。そしてカメラの代わりに、液晶モニターとスピーカーを取り付け、ナヴィ役の俳優の顔と音声を流す。そのポジションを、ナヴィの頭の位置に正確に合わせることで自然な会話が撮影でき、キャメロンはサイマルカムを用いて合成結果を現場で確認できる。
より複雑なのが、人間とナヴィが抱き合う場合だ。これには、ショットに応じていくつかの手法が組み合わされているが、一例として、ナヴィを演じる俳優にブルースーツを着せ、アップル・ボックス(映画用語:日本で言う箱馬)の上に立たせ、人間役の俳優にハグをさせる方法がある。この時、ナヴィ役のブルーの腕も人間の体に触れているが、そこはCGで処理された。こういったノウハウは、『アバター』の他、リブート版『猿の惑星』シリーズや、『アリータ:バトル・エンジェル』などで経験を積んできた、Wētā FX(Wetaデジタル)の真骨頂である。