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『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(前編)

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(前編)

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HFR効果の大成功



 『WoW』を大きく特徴付けるのが、通常の映画の24fps(毎秒24フレーム)に対し、48fpsによるハイフレームレート(HFR)を採用したという点である。キャメロンは2011年の「Cinema Con」で、「すでに1作目の『アバター』でも48fpsを検討していたが、上映環境が整っておらず見送った」と語り、「続編は48fpsか60fpsで撮る予定だ」と述べていた。


 1996年にキャメロンは、フロリダのユニバーサル・スタジオにオープンしたアトラクション「T2 3-D:Battle Across Time」(USJ版は「ターミネーター2:3-D」)の演出を手掛けいる。この映像システムは、70mm 60fpsのショースキャン・システムを用いた3D映像だった。実際にジョン・ランドーは、「キャメロンが、最初の『アバター』に3Dを用いるインスピレーションは、そのアトラクションから得た」と語っている。


 しかし、HFRは必ずしも良い結果をもたらさない。これまでピーター・ジャクソン監督の『ホビット 思いがけない冒険』(12)や、『ホビット 竜に奪われた王国』(13)、『ホビット 決戦のゆくえ』(14)、あるいはアン・リー監督の『ビリー・リンの永遠の一日』(16)や『ジェミニマン』などにHFR上映が用いられてきた。しかし、「テレビドラマみたいだ」「撮影現場を見学しているよう」「テレビゲームのようだ」「動きがヌルヌルだ」などといった、否定的な感想が多く寄せられる。



『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.


 HFRは、シミュレーション・ライドなどのアトラクション映像や、ドキュメンタリーでは非常に高い効果をもたらす。だがフィクション作品では、過剰なリアリティが足を引っ張る結果を生んでしまった。人間の視力には個人差がある関係で、解像度の高さは必ずしも比例した効果を示さない。むしろ、フレームレートの変化の方に、ほとんどの人が敏感に反応する。だがそれゆえ、セットの素材や、俳優のメイクなどの嘘臭さが顕著に見えてしまうのだ。


 そこでキャメロンは、不要な生っぽさを避けるため、通常のシーンでは24fpsで上映し、動きの早い場面のみHFRを使うというプランを立てた。これは日本のアニメが、基本的に秒8枚で作画し、動きに合わせて12枚や24枚を組み合わせるという考え方に似ている。ランドーによると、アップの場面などは24fpsとし、ストロビング(被写体が複数ダブって見える現象)が発生するような場面は48fpsにしたそうである。フレームレートの変更箇所はほとんど意識に上らず、自然に切り替わっていた感じだ。このアイデアは非常に効果的で、ナヴィたちがスキムウィング(トビウオのようなクリーチャー)に乗って激しく飛び回るシーンでも、非常に鮮明に見える。


 また、全ての水が関係するシーンは48fpsになっている。実はHFRと水の愛称は抜群に良く、どう見ても本物に見えてしまう。「CGで水を描くなんて、今時珍しくない」という人は、ぜひHFRでの鑑賞を体験して、その衝撃を実感して欲しい。『WoW』は、HFRを用いた劇映画としては最初の成功例になったと言えよう。


 なおキャメロンは、『アバター』の時からプリビズを使わない主義なので、バーチャルカメラやサイマルカムで記録された映像が、そのまま編集作業に用いられる。そしてこの時に、どのショットを48fpsにすべきかと選び出し、Wetaデジタルに指示を出していった。


 ちなみに劇場のプロジェクターでは、上映時に24fpsと48fpsの切り替えは出来ない。そのため、HFRの劇場はすべて48fpsで上映し、24fpsのショットは同じフレームを2回投影している。



後編に続く



文:大口孝之(おおぐち たかゆき)

1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、早稲田大理工学部、女子美術大学専攻科、東京藝大大学院アニメーション専攻、日本電子専門学校などで非常勤講師。主要著書として、「3D世紀 -驚異! 立体映画の100年と映像新世紀-」ボーンデジタル、「裸眼3Dグラフィクス」朝倉書店、「コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション」フィルムアート社




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『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

絶賛公開中

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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