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『子猫をお願い』ペ・ドゥナという詩人、野良猫の狼煙

©2001 by IPictures and Masulpiri Pictures.

『子猫をお願い』ペ・ドゥナという詩人、野良猫の狼煙

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野良猫の狼煙



 面を喰らうような始まり方。『子猫をお願い』(01)は、波止場で無邪気にじゃれ合う五人組の女子高生たちの姿で唐突に始まる。年代物の映写機で思い出のフィルムを再生するようなプライベートな質感。肩を組んで歌い、ステップを踏む女子高生たち。テヒ(ペ・ドゥナ)がカメラで記念撮影をすると、フィルムが感光していくような光で画面はフェイドアウトする。次のシーンで映画はスラム街の風景を捉える。窓ガラスの割れた建物。「それから数ヵ月後」とキャプションの付いたこの風景からは、キラキラした青春の風景は完膚なきまで消え去っている。人生の両極を提示するようなこの面を喰らう始まり方は、これまで映画に描かれてこなかった「私たちの世代の女性」を描くという決意の狼煙であり、若き映画作家とその仲間たちによる宣言でもある。


 チョン・ジェウンによる本作は、韓国の女性映画作家の道標になった記念碑的な作品だ。『はちどり』(18)を手掛けたキム・ボラ等、後続の女性映画作家から多大なリスペクトを集め続けている。初公開から20周年を迎え、本作のオリジナル脚本や撮影時のスチール、絵コンテ等を含むアーカイブ・ブックが刊行されている。



『子猫をお願い 4Kリマスター版』©2001 by IPictures and Masulpiri Pictures.


 インチョンの商業高校を卒業した彼女たちのその後の人生。実家のサウナ業を手伝いモラトリアムな生活をしているテヒ。ソウルの証券会社に勤める野心的なヘジュ(イ・ヨウォン)。テキスタイルの勉強をしつつも、貧しい家庭に生まれたことが足枷になっているジヨン(オク・チヨン)。明るい笑顔を振りまき、露店でアクセサリーを売っている中国系移民の双子の姉妹ピリュとオンジョ(イ・ウンジュとイ・ウンシル)。学生時代は対等な関係だったはずの彼女たちは、社会に出ることで無邪気さを失っていく。貧富と学歴の格差。本人たちの力だけではどうにもできない外的な要因によって、彼女たちは苦しめられていく。ジヨンには両親がいない。学校の成績は優秀だったにも関わらず、身元保証人がいないことを理由に職を断られる彼女の状況はことさら深刻だ。




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