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『ホワイト・ノイズ』ノア・バームバック流パンデミック映画にみる“死”への向き合い

WILSON WEBB/NETFLIX © 2022

『ホワイト・ノイズ』ノア・バームバック流パンデミック映画にみる“死”への向き合い

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※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『ホワイト・ノイズ』あらすじ

化学物質の流出事故に見舞われ、死を恐れ錯乱してしまった大学教授が、命を守るため家族とともに逃走する姿を描く、叙情的で不条理な物語。現代のアメリカ人家族が、日常生活の中でありふれた葛藤に直面し、愛、死、そして不確かな世界における幸福の可能性といった普遍的な謎に向き合う。


Index


「死の恐怖」を描いたパンデミック×不条理喜劇



 海の向こうで戦争が起こってしまい、国内の政局が乱れ、約30年ぶりの円安に物価高……そしてコロナ禍も4年目を迎える。ここ最近の我々の胸中穏やかざるものだったのではないか。


 現状そして将来に対する不安や恐怖、或いは怒り、諦念――。パラノイア(偏執病)やタナトフォビア(死恐怖症)が加速していくこのタイミングで、本作が登場する必然性を感じずにはいられない。ノア・バームバック監督作『ホワイト・ノイズ』(2022年12月9日より一部劇場で公開、12月30日よりNetflix配信)である。


 デヴィッド・クローネンバーグ監督により映画化された「コズモポリス」で知られる小説家ドン・デリーロの著作で、1985年に全米図書賞を受賞した同名小説を映画化。ある日、居住区で化学物質の流出事故が発生。避難生活を経験したことで死の恐怖に取りつかれた大学教授とその家族を描くシニカルな不条理コメディだ。ちなみに「ホワイト・ノイズ」とは雑音の一種で、空調や換気扇のような周波数が均一であるものを指すそう。雑音でありながら、睡眠効果や集中力アップにも有効だという。



『ホワイト・ノイズ』WILSON WEBB/NETFLIX © 2022


 『ホワイト・ノイズ』はバームバック監督が脚本を手掛け、公私ともにパートナーであるグレタ・ガーウィグと、『マリッジ・ストーリー』(19)でも組んだアダム・ドライバーが出演。バームバックとガーウィグは、彼女の監督作『Barbie(原題)』(23)でも組んでおり、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)の美術監督ジェス・ゴンコール、装飾担当クレア・カウフマンらが参加。エンドクレジットでは、バームバック監督の友人であるLCDサウンドシステム(ジェームス・マーフィー)が書き下ろした「new body rhumba」が流れる。


 ただ、全体的に見るとスタッフ陣の顔ぶれは新鮮だ。撮影監督は『さざなみ』(15)や『悪魔はいつもそこに』(20)のロル・クローリー、劇伴は大御所ダニー・エルフマン、編集は『複製された男』(13)や『ポゼッサー』(20)のマシュー・ハンナムが務めている。ちなみに製作はA24や『ハリー・ポッター』シリーズなどのヘイデイ・フィルムズ等が手掛けている。


 作家性がバチバチに出まくったアート系映画ながら、製作費が8,000万~1億ドルともいわれている大作でもある本作。コロナ禍で製作費用は20%上昇したとも言われているが、80年代の再現に恐怖と笑いが混ざったパンデミック描写等々、リッチな画作りが行き届いている。本稿ではこの奇妙なる意欲作の魅力を探っていきたい。





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