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『ギャラクシー・クエスト』オタク文化への愛に満ち溢れつつ、観た人の背中を押してくれる大傑作

(c)Photofest / Getty Images

『ギャラクシー・クエスト』オタク文化への愛に満ち溢れつつ、観た人の背中を押してくれる大傑作

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『ギャラクシー・クエスト』あらすじ

20年前、放送を打ち切られたTV番組「ギャラクシー・クエスト」。今も熱狂的なファンを持つ伝説番組で、20年経った今でもファン集会が行われていた。しかし、そこに奇妙な4人組が現れ、「自分たちの星を侵略者から守って欲しい」と、「ギャラクシー・クエスト」の出演者に助けを求める。冗談かと思い、本気にしなかった出演者たちだったが、この4人は本当の異星人だった。異星人たちはTVでの彼らの活躍を本物と思い込み「ギャラクシー・クエスト」そのままの宇宙船も用意していた……。


Index


限りない引用を気にしなくてもいい「やさしい」作り



 オマージュやパロディの側面が濃厚な作品が、それ自体、美しい輝きを放って多くの人に愛される。『ギャラクシー・クエスト』(99)は、その典型的な例だろう。


 名作や人気作品のオマージュやパロディは数限りなく存在するが、『ギャラクシー・クエスト』の場合、「スタートレック」(日本での最初の放映時は「宇宙大作戦」)と、同シリーズのオタク的なファン「トレッキー」という構図、つまり取り巻く世界までを基本として引用した点が特別といえる。


 TV番組「ギャラクシー・クエスト」は、放送終了から20年近く経っても根強いファン層が存在し、イベントが行われているという設定。「スタートレック」は「ギャラクシー・クエスト」という人気シリーズ作品に翻案され、「トレッキー」というファンの総称は「クエスタリアン」となった。


『ギャラクシー・クエスト』予告


 映画『ギャラクシー・クエスト』(※以下、ギャラクエ)は、基本的にオリジナルへのリスペクトで溢れまくっているが、では、トレッキー向けなマニアックな作りかといえば、そうでもない。「スタートレック」のU.S.S.エンタープライズ号に対し、『ギャラクエ』ではプロテクター号という宇宙船が登場。その乗組員の構成も酷似している。転送装置や衣装もそっくり。中心となるタガード船長(俳優名はジェイソン・ネズミス)を演じたティム・アレン自身、トレッキーということで、「スタトレ」のカーク船長の髪型や表情、椅子の座り方まで再現し、戦いの後に空を見上げてキョロキョロするなど微妙な仕草まで“細かすぎる”モノマネを披露する。イベント会場のトイレで、ジェイソンが共演者たちの自分に対する不満をファンの噂話で耳にするエピソードは、実際に「スタトレ」のカーク役、ウィリアム・シャトナーが体験したこと。


 これらも含め、『ギャラクエ』における「スタトレ」の内容およびキャストにまつわるネタは数え切れない量で、もっと言えばシガニー・ウィーバーが出演していることで「エイリアン」シリーズのパロディなども盛り込まれるが、これ見よがしで描かれるわけではなく、「スタトレ」をまったく知らない人にもすんなり没入させる“やさしい”作りになっている。本格的オタクテイストでは、トレッキーの実態を追った『トレッキーズ スター・トレック万歳!』(97)というドキュメンタリーの方がはるかに上回っていた。なお同作は『トレッキーズ2 〜スター・トレックはやめられない〜』(04)という続編も製作された。





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