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『ギャラクシー・クエスト』オタク文化への愛に満ち溢れつつ、観た人の背中を押してくれる大傑作

(c)Photofest / Getty Images

『ギャラクシー・クエスト』オタク文化への愛に満ち溢れつつ、観た人の背中を押してくれる大傑作

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『七人の侍』にもつながる助っ人たちのカタルシス



 TVの「ギャラクシー・クエスト」を本物だと思い込んだ異星人サーミアン(彼らには「作り物」「嘘」という概念がない)が、乗組員役の俳優たちをスーパーヒーローだと信じて助けを求めてくる物語。過去の栄光にすがってファンイベントを適当にこなし、さえない日常に甘んじ、もがいていた俳優たちが、本物のヒーローになっていく『ギャラクエ』の展開は、人生を諦めていた人への鮮やかなエールになっており、素直に胸を熱くする。ある意味で、映画としては王道。


 実際に『ギャラクエ』の公開時には、1986年のジョン・ランディス監督作『サボテン・ブラザース』に似ているという評も多く見かけた。映画で悪党退治をしたハリウッドの俳優たちを、本物のヒーローだと思い込んだ信じ切ったメキシコの住民が救援を要請してくる。俳優たちは新作映画の撮影だと勘違いして向かったところ、本物の“お助け人”になってしまう……というプロットだったからだ。さらに『ギャラクエ』と同じ1999年公開のピクサーのアニメ『バグズ・ライフ』も、英雄と勘違いされた助っ人(虫)たちの物語。そしてこれら助っ人チームの戦いを描いた映画は、黒澤明監督『七人の侍』(54)にも行き着く。『ギャラクエ』の主人公たちが、自分とは無関係な異星人のために献身する姿は、野武士の来襲に怯える村人たちのために、その身を犠牲にする侍たちと重なる……というのは極論にしても、映画的カタルシスは近い感覚だろう。



『ギャラクシー・クエスト』(c)Photofest / Getty Images


 『ギャラクエ』の場合、そのカタルシス的展開に、SF映画マニア向けのサービス精神をたっぷりまぶしたのも特徴。その役割を担ったのがスタン・ウィンストンによるデザインだ。『エイリアン2』(86)、『ターミネーター2』(91)、『ジュラシック・パーク』(93)で3度のアカデミー賞視覚効果賞を受賞。『ターミネーター2』では同メイクアップ賞にも輝いた、特殊メイクや特殊効果の“神”。そのウィンストンと彼のチームは、サーミアンを滅ぼそうとする恐るべき宇宙人のサリスや、プロテクター号の乗組員でトカゲのような頭のエイリアンキャラ、ドクター・ラザラス(「スタトレ」のスポックとドクター・マッコイを合わせた役どころ)の造形などを手がけている。ちなみに当初の字幕では、ラザラスが何かを誓う際のファンにも人気のセリフが、「トカゲヘッドにかけて」と訳されていたが、近年は原語に近づけて「グラブザーの槌にかけて」などと修正されるケースもある。


 ウィンストンの作品で最も衝撃を誘うのは、最初は人間の外見で登場するサーミアンの真の姿だろう。エイリアン映画の歴史を振り返っても、かなりぶっとんだデザインで、しかもケーブルで操作するシリコン製のモデルを完成させたウィンストンだったが、さすがに不安を感じ、撮影の2週間前にスティーヴン・スピルバーグに相談。スピルバーグは本作のプロデューサーではないが、製作のドリームワークスの創設者だった。ウィンストンに対し、スピルバーグは「奇抜すぎる。『未知との遭遇』(77)のように、もっと人間に近い外見がいい」とアドバイスしたという。しかし大幅に作り直す時間もなかったことから、ウィンストンは当初のデザインで行くことを再びスピルバーグに報告した。もし製作の余裕があれば、あの奇抜なエイリアンは生まれなかったかもしれない。





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