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『ギャラクシー・クエスト』オタク文化への愛に満ち溢れつつ、観た人の背中を押してくれる大傑作

(c)Photofest / Getty Images

『ギャラクシー・クエスト』オタク文化への愛に満ち溢れつつ、観た人の背中を押してくれる大傑作

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その後の躍進もめざましいキャストたち



 『ギャラクエ』が映画ファンの心をつかんだ1999年の時点で、本家の「スタトレ」はどうだったかというと、劇場版もコンスタントに公開され、TVシリーズもそれなりに継続していたものの、固定ファンから新たなファンを開拓していたかといえば、それほどではなく、どこかマンネリな空気も漂っていた。それを打破しようと、J.J.エイブラムスが2009年に超大作としてのリブート『スター・トレック』を送り出すのだが、監督を務めたJ.J.は大好きな『ギャラクエ』にも背中を押されたという。


 そして『ギャラクエ』はキャストたちの背中を押すことにも成功した。劇中では、過去の出演作の栄光にすがり、現実の俳優人生はパッとしないキャラクターたちが、もう一度輝きを取り戻したが、演じた俳優たちの何人かは本作の後に大きく飛躍したり、生涯の代表作に出会ったりした。プロテクター号の乗組員のキャストのうち、ティム・アレンはすでに映画『サンタクローズ』(94)の主演や『トイ・ストーリー』(95)のバズの声などを務めていたし、シガニー・ウィーバーはすでにアカデミー賞に3回ノミネート(同年の2部門も含む)されている大女優だった。



『ギャラクシー・クエスト』(c)Photofest / Getty Images


 一方で、白人なのにTVの「ギャラクエ」内ではアジア系のキャラという複雑な状況を演じたトニー・シャルーブは、この後、TVシリーズ「名探偵モンク」(02〜09)の主人公が最高の当たり役となる。また、すぐに命を落とす乗組員役でイベントではMCをやらされるサム・ロックウェルは、『ギャラクエ』と同年の『グリーンマイル』(99)で注目度が上がり、個性派俳優としての活躍が『スリー・ビルボード』(17)でのアカデミー賞助演男優賞受賞へとつながっていく。


 黒人の乗組員トミーの子役時代を演じたコービン・ブルーは「ハイスクール・ミュージカル」シリーズのメインキャスト、チャド役をつかんだし、熱狂的なクエスタリアンで、その知識でサリスとの戦いにも参加するブランドン役で『ギャラクエ』が映画デビュー作だったジャスティン・ロングもベテラン俳優へと成長した。


 そしてクライマックス近くで、ヒーローとしての自覚を取り戻す瞬間を、スタン・ウィンストンの特殊メイクをボロボロに崩しながらの感動の名演とともに披露した“トカゲヘッド”ラザラス役のアラン・リックマン。すでに『ダイ・ハード』(88)の悪役ハンスなどで映画ファンには知られる存在だったが、『ギャラクエ』の後、『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)にはスネイプ先生として登場。世界的大ヒットシリーズで、全体を通して重要な鍵を握る役どころとして、その独特な存在感は幅広い世代に人気を広げた。


 惜しまれるのは、そのアラン・リックマンが2016年に亡くなってしまったこと。『ギャラクエ』は続編の計画もあったが、彼の死によってその可能性は薄れる。プロテクター号乗組員のキャストたちに対し、クエスタリアンは何年経っても、右の拳を胸に当てるおなじみのポーズで愛を捧げたが、その限りないオタク愛と同じ気持ちから、『ギャラクエ』キャストのリユニオンを、いつの日か見てみたいと感じる。2021年の段階で、ティム・アレンやシガニー・ウィーバーは続編に前向きというニュースも流れたので、わずかな希望を託したい。「Never Give Up! Never Surrender!(諦めるな、降伏するな)」という『ギャラクエ』の名セリフとともに……。


追記:

2023年4月19日、Paramount+(パラマウント+)によって『ギャラクシー・クエスト』を基にしたTVシリーズが製作されることが決まった。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。



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