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『ゴールデン・エイティーズ』綻びから生まれる歌、もう一人のジャンヌへのプレゼント

© Jean Ber - Fonda&on Chantal Akerman

『ゴールデン・エイティーズ』綻びから生まれる歌、もう一人のジャンヌへのプレゼント

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室内楽ミュージカル



 地下のショッピングモールを舞台とする『ゴールデン・エイティーズ』は、いわば室内楽ミュージカルだ。身体能力の高さを示すようなダンスは本作にはない。パートナーと組み交わす情熱的なダンスもない。その意味で本作は、パリのアパルトマンの一室を豊かなミュージカル空間に変えたゴダールの『女は女である』(61)の系譜に連なる異形のミュージカルといえる。自作自演の破壊的な短編『街をぶっ飛ばせ』(68)から始まるシャンタル・アケルマンのフィルモグラフィーは、室内、そして何より「部屋」という居住空間を観察することをベースとしてきた。


 ハイヒールの女性をはじめ、複数の女性の歩く足元を捉えたエレガントなショットで本作は始まる。コツコツと床に響く靴の音が、まるでこれから始まるミュージカル映画を祝福しているかのようだ。物語の中心ではなく周縁から始める創作。一般的な映画において、皿洗いは”ヒエラルキーの最下層”にあると、かつてシャンタル・アケルマンは言及していた。家事という何でもない身振りを蓄積していくことで、反復される舞踏性がやがてサスペンスを生む『ジャンヌ・ディエルマン』。



『ゴールデン・エイティーズ』© Jean Ber - Fonda&on Chantal Akerman


 対照的に「抱擁」というドラマチックでクライマックスな身振りを集積していくことで、愛のエネルギーの所在/不在を探求する『一晩中』(82)(この独創性に満ちた傑作について監督は「破片」という言葉で形容している)。シャンタル・アケルマンの映画は、身振りの破片によって形作られていく。破片によって作られた歌。


 製作資金を集める目的で撮られた本編の草稿版ともいえる『80年代』(83)は、まさに破片の集積だ。リハーサル風景や断片が収められたこの作品は、ある意味シャンタル・アケルマンのフィルモグラフィーの中でもっともゴダール的な一本といえる。素材が素材のまま、そこにある。身振りの探求が剥き出しのまま収録されている。この作品では録音マイクの前で歌の指揮を振るシャンタル・アケルマンの姿が確認できる。ダイナミックな身振りに喜びが宿っている。




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