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『犬ヶ島』ウェス・アンダーソンの作劇と日本的物語の融合

『犬ヶ島』ウェス・アンダーソンの作劇と日本的物語の融合

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犬隔離政策が想起させるいくつかの史実



 メガ崎市でドッグ病が蔓延したことを理由に、小林市長はすべての犬を捕らえてゴミ島=犬ヶ島に隔離した。この導入部は私たちにいくつかの歴史上の出来事を連想させる。


 まず、日本史上まれに見る悪法とされる、江戸時代の第5代将軍徳川綱吉が定めた「生類憐れみの令」。特に犬が手厚く保護されたと言われ、『犬ヶ島』の政令はこれを反転させた格好だ。真逆ではあるが、権力者の理不尽な政策に庶民も動物も翻弄される点ではよく似ている。


 世界史に視野を広げると、第二次大戦期の民族隔離政策が思い浮かぶ。ナチスドイツが欧州で行ったユダヤ人迫害がよく知られるが(『犬ヶ島』の終盤でもホロコーストを思わせる陰謀が準備される)、アメリカを中心とする連合国でも日系人の強制収容が実施された。




 ゴミが山のように投棄された土地と、そこでたくましく生きるキャラクターたちの描写は、黒澤監督作『 どですかでん』からの借用だ。同作は1960年代後半にゴミ捨て場があった江戸川区堀江町でロケ撮影されたが、「ゴミ」と「島」と聞けば同時期の江東区にあった埋立地「夢の島」を思い出す人も多いだろう。こんなところでも、私たちの記憶と『犬ヶ島』の物語はつながっている。


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