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『犬ヶ島』ウェス・アンダーソンの作劇と日本的物語の融合

『犬ヶ島』ウェス・アンダーソンの作劇と日本的物語の融合

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『ハチ公物語』と『南極物語』のエッセンス



 両親を失ったアタリ少年に「あなたの安全を末永く守ります」と忠誠を誓った護衛犬スポッツ。親友になったスポッツの生存を信じ、犬ヶ島へ乗り込んで捜索するアタリ少年。両者の絆は、犬が登場しハリウッド版リメイクも作られた2本の邦画を思い出させる。


 飼い主に忠誠を尽くした最も有名な犬の実話はもちろん、亡き主を渋谷駅前で10年も待ち続けたという「忠犬ハチ公」だ。これを映画化した仲代達矢主演作『 ハチ公物語』が1987年に公開され、2009年にはリチャード・ギア主演でリメイク作品『 HACHI 約束の犬』が製作された。


 一方1983年公開の高倉健主演作『 南極物語』は、南極観測隊に同行した兄弟犬タロとジロが、隊の帰還の際に取り残されながらも1年後に救出された実話を映画化したもの。こちらは2006年にポール・ウォーカー主演で『 Eight Below』としてリメイクされた(邦題はオリジナル作と同じ『南極物語』)。




 日本人がよく知るこれらのストーリーには、米国や他の国の観客にも受け入れられる普遍的な魅力があるとハリウッドのプロデューサーが確信したからこそ、リメイクが実現したのだろう。ウェスが日本を舞台にした犬の映画を作るにあたり、リサーチの段階でこうした作品を参考にしたとしても不思議ではない。


 これまで見てきたように、『犬ヶ島』には日本人観客が親しみを覚える物語の類型、エッセンスがたっぷり詰まっている。レトロフューチャーな日本で展開するストーリーに、どこか懐かしさを感じるのはそのためだ。



文:高森郁哉(たかもり いくや)

フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。



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『犬ヶ島』

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation


※2018年6月記事掲載時の情報です。

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