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『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』ウェス・アンダーソンの創造性が生んだフィクショナルな家族の肖像

(c)Photofest / Getty Images

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』ウェス・アンダーソンの創造性が生んだフィクショナルな家族の肖像

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難航したジーン・ハックマンとの出演交渉



 中でもストーリーの方向性を決定づけたのは、ロイヤル・テネンバウムというキャラクターだった。当初からジーン・ハックマンを想定していた役柄を脚本内で掘り下げるにつれ、物語はいっそう破天荒で自由奔放な方向へ振り切れることに。


 だが、肝心の出演交渉の段階に及んでみると、ハックマンは決して一筋縄ではいかない相手だった。そもそも本作は潤沢な製作費があるわけではないし、出演料はレジェンド級の俳優にとっては破格の安さ。その上、主人公はいろんな場面に顔を出さねばならないので、拘束期間もやたらと長い。


 アンダーソンは「あなたを想定してこの役を書いた」と熱心に説得したものの、対するハックマンは「自分のことを念頭に書かれるのは好きではない」と返し(「俺の何を知ってるんだ?」という気持ちになるらしい)、なかなか話はまとまらない。



『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(c)Photofest / Getty Images


 また、ハックマンが3人の子持ちで離婚経験者であることなども、気乗りがしなかった理由のようだ。それでも最後は、彼のエージェントが熱心に勧める形でしぶしぶ出演が決まったという。


 ちなみに、いざ撮影が始まると、ハックマンが現場で声を荒げる場面も多かったそうで、一説では彼の集中砲火からアンダーソンを守るべく、出番のない日でもビル・マーレイがわざわざ立ち会ってくれたこともあったとか(*1)。『天才マックスの世界』(98)以来続く二人の固い連帯は、こんなところからも如実に窺えるのである。


1)https://www.indiewire.com/2011/10/nyff-wes-anderson-cast-of-royal-tenenbaums-talk-the-challenges-of-working-with-gene-hackman-115775/




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