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『ライフ・アクアティック』奇想天外な海洋アドベンチャーに投影された、ウェス・アンダーソンの映画づくりと仲間への想い

(c)Photofest / Getty Images

『ライフ・アクアティック』奇想天外な海洋アドベンチャーに投影された、ウェス・アンダーソンの映画づくりと仲間への想い

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『ライフ・アクアティック』あらすじ

世界的に有名な海洋学者にして海洋ドキュメンタリー監督のスティ-ヴ・ズィスー(ビル・マーレイ)は、ここ数年ヒット作に恵まれず、人生の危機を迎えていた。自身の名声をも取り戻すため、ズィスーは新たな航海に出ることを決める。映像制作集団”チーム・ズィスー“を率いて探査船で海へ乗り出すが、思わぬハプニングの連続で窮地に陥る。


Index


レストランでの共同作業によって生まれた物語



 ウェス・アンダーソン作品には、一つのこだわりを持った特殊な集団を描いたものが多い。カメラアングルの中に登場人物がギュッと密になって集合写真のように収まる描写だったり、はたまたカメラの水平移動や空間をスライスした断面図的な見せ方は、いわば彼のトレードマークのようなもの。


 これらを踏襲しつつ、それでいて作品ごとに語り口や構造をガラリと変容させるのが、アンダーソンの面白さだ。彼の映画づくりは、表面上の物語のみならず、一つの完成された”世界”そのものを、根本から創造する作業と言えるのかもしれない。


 中でも長編4作目となる『ライフ・アクアティック』(04)は愛すべきユニークな作品だ。アンダーソンが脚本執筆の相棒として新たに組んだのは、『イカとクジラ』(05)で知られるノア・バームバック。ニューヨークにあるBar Pittiというレストランで、毎日13時か14時ごろに待ち合わせして、同じテーブルで夜までずっとアイディアを語り合いながら、全てを細かくメモしていく。そうやって『ライフ・アクアティック』の作品世界は徐々に形を帯びていった。


『ライフ・アクアティック』予告


 つまり本作は、仕事机にかじりついてウンウン唸りながらの孤独な缶詰作業で生まれたものではない。ということだ。


 周囲のテーブルからの賑やかな話し声が絶え間なく聞こえ、グルメ心くすぐる料理の香りが鼻腔をくすぐる距離感の中、途中に2食分の休憩を挟みながら執筆を進めるーー。こういった愛すべき環境に包まれ、なおかつ自ら語るアイディアで、目の前の相棒のリアクションをつぶさに受けながら生まれた創作世界だからこそ、本作には、というよりアンダーソン作品には、いつも微笑みの絶えない極上の贈り物のような空気が詰まっているのである。




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