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『ライフ・アクアティック』奇想天外な海洋アドベンチャーに投影された、ウェス・アンダーソンの映画づくりと仲間への想い

(c)Photofest / Getty Images

『ライフ・アクアティック』奇想天外な海洋アドベンチャーに投影された、ウェス・アンダーソンの映画づくりと仲間への想い

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フェリーニの名作と相通じるもの



 他にも『ライフ・アクアティック』を読み解く上で押さえておきたい要素がある。それは映像の魔術師フェリーニの名作との共通点だ。ここでも音声解説でのバームバックとアンダーソンの言葉を引用してみよう。


バームバック:「フェリーニの『8 1/2』(63)でマストロヤンニが演じたグイドと相通じるものがある。物語の出だしは違うけれど、グイドも過去の人間関係を見つめ直そうとするんだ」


アンダーソン:「基本的なストーリーラインは同じだね」



『ライフ・アクアティック』(c)Photofest / Getty Images


 なるほど、『8 1/2』ではマストロヤンニ演じる悩める映画監督が過去の人間関係、女性関係を振り返り、夢や幻想の中に迷い込みながら、それでもなお人生を前に進めていこうとする。まさにマーレイ演じるズィスーがぶつかる壁と同じものだ。


 さらに面白いことに『ライフ・アクアティック』は、ローマの歴史的な映画撮影所”チネチッタ”でもカメラが回された。そこは言うまでもなくフェリーニが数々の名作を生み出した聖地。かくも映像の魔術師からの霊的な影響を浴びながら本作は生まれたと言ってよかろう。


 しかしながら、いざアンダーソンがアウトプットした作品はまるでフェリーニとは印象が異なる。目の前の素材を貪欲に吸収しつつ、そこから全くのオリジナル、唯一無二の世界観を構築してしまう特殊な才能が、彼にはあるのだ。




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