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『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』ウェス・アンダーソンの創造性が生んだフィクショナルな家族の肖像

(c)Photofest / Getty Images

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』ウェス・アンダーソンの創造性が生んだフィクショナルな家族の肖像

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反発し合いながらも、共に傷を癒し成長していく”家族”の姿



 他にも、本作にはアンダーソン作品らしいこだわりが盛り沢山。冒頭の語り口や、テネンバウム邸のたたずまいには、オーソン・ウェルズ監督作『偉大なるアンバーソン家の人々』(42)の影響があるというし、作中にルイ・マル監督作『鬼火』(63)のセリフが引用されていたり、子供たちの関係性の中に『恐るべき子供たち』(50)の設定が活かされるなど、巨匠たちの傑作から抽出した要素を独自の持ち味へと進化させているのも見逃せないポイントだ。


 一方、映画がクライマックスへ向かうにつれて強く際立ってくるのは、アンダーソンならではの「家族」への思いではないだろうか。


 DVDのコメンタリーで彼は「僕が描きたかったのは、家族の中で感じる戸惑いと、共に傷を癒す姿だ。家族はいちばん身近なところにいる存在。人はその中で成長し、(家族は)僕らにかけがえのないものを与えてくれるんだ」と語っている。



『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(c)Photofest / Getty Images


 かくも2001年という新たな世紀の始まりに「家族の絆」を大切に抱きしめた彼。続く『ライフ・アクアティック』(04)でも同様のオールスターキャスト映画を織りなしているものの、そこに描かれたのは、もはや家族という枠組みだけでは収まりきれない「同じ志を持って冒険を続ける仲間たち」の姿だった。


 その後も『ダージリン急行』(07)や『ファンタスティック Mr.Fox』(09)では再び家族へと揺り戻し、かと思えば『ムーンライズ・キングダム』(12)や『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)では家族を超えた絆が描かれ、『犬ヶ島』(18)や、『フレンチ・ディスパッチ』(21)においてもまた「仲間」をめぐる通奏低音が深く響きわたっていたのを思い出す。


 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』から20年以上。これらの作品の変遷からも分かるように、アンダーソンにとって仲間たちの存在は、今や家族と同じくらい”かけがえのないもの”となっているのは明らかだ。


 彼はこれからも心地よい空気を保ったまま、仲間と共に映画づくりの大海へと漕ぎ出していくのだろう。果たしてそこではどんな冒険が繰り広げられるのか。通常だと2、3年おきに新作がお目見えするところだが、現在すでに2作("Asteroid City"、"The Wonderful Story of Henry Sugar")が待機中ということもあり、幕の上がる瞬間が待ちきれないのである。


参考資料:

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』DVDコメンタリー

https://www.indiewire.com/2011/10/nyff-wes-anderson-cast-of-royal-tenenbaums-talk-the-challenges-of-working-with-gene-hackman-115775/

https://screenrant.com/royal-tenenbaums-movie-gene-hackman-turned-down-reason/

https://web.archive.org/web/20170213023258/https://www.vulture.com/2013/10/how-wes-anderson-made-the-royal-tenenbaums.html



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。




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