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『ロープ』ワンシーン・ワンカットによって発揮される、ヒッチコックの超絶技巧

(c)Photofest / Getty Images

『ロープ』ワンシーン・ワンカットによって発揮される、ヒッチコックの超絶技巧

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※本作はカラー作品ですが、都合上モノクロ画像を使用しております。予めご了承ください。


『ロープ』あらすじ

ニューヨークの街並みを一望できる高層アパートの一室。ニーチェの「超人思想」を実践すべく、ブランドンとフィリップは大学時代の同級生のデイヴィッドを殺害する。さらに彼らは、“選ばれし者”の優越感を味わうために、デイヴィッドの父親やガールフレンド、大学時代の教師のルパートを招いて、パーティを催す。完璧だったはずの計画は、やがて綻びを見せるようになっていく…。


Index


超人思想にかぶれた2人の学生による殺人



 1924年5月23日、ペンシルバニア鉄道の線路下から、当時まだ14歳だったボビー・フランクスの死体が発見された。物的・状況証拠から、ネイサン・フロイデンソール・レオポルド・ジュニア(19歳)と、リチャード・アルバート・ローブ(18歳)が逮捕される。二人は、シカゴ大学に通う富裕層の学生だった。


 動機は怨恨でも、金銭トラブルでも、痴情のもつれでもない。ドイツの哲学者ニーチェが提唱した概念「超人思想」にかぶれた二人が、自分たちが“選ばれし者”であることを証明するべく実行した殺人だった。真に優れた知性の持ち主であれば、社会の通常の倫理や規則には縛られない…彼らはそう考えたのである。殺害する相手は、誰でもよかった。裁判の結果、二人は殺人罪に対して終身刑、誘拐罪に対して99年の懲役刑を受ける。レオポルドは後に仮釈放され、ローブは刑務所で服役囚に殺害された。


『ロープ』予告


 この事件は大きな反響を呼び、1929年にはパトリック・ハミルトンによって戯曲化。その戯曲を元にした映画が、アルフレッド・ヒッチコック監督による心理犯罪スリラー『ロープ』(48)である。舞台は、ニューヨークの街並みを一望できる高層アパートの一室。ニーチェの「超人思想」を実践すべく、ブランドン(ジョン・ドール)とフィリップ(ファーリー・グレンジャー)は大学時代の同級生のデイヴィッドを殺害する。さらに彼らは、“選ばれし者”の優越感を味わうために、デイヴィッドの父親やガールフレンド、大学時代の教師のルパート(ジェームズ・スチュワート)を招いて、パーティを催す。完璧だったはずの計画は、やがて綻びを見せるようになっていく…。


 本作はヒッチコックにとって、最も実験的な作品といっていいだろう。何しろ、物語がリアルタイムで進行する「ワンシーン・ワンカット映画」なのだから。今でこそ『1917 命をかけた伝令』(19)や『ボイリング・ポイント/沸騰』(21)など、全編ワンシーン・ワンカットは珍しくない。だが、当時は大胆極まりない挑戦だった。涙ぐましい努力を経て、ヒッチコックはこの実験を敢行したのである。





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