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『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』ワイスピ的ウルトラCを堪能せよ!これは奇跡かご都合主義か⁉※注!ネタバレ含みます。
2023.06.14
「ジャスティス・フォー・ハン」問題は解決したか?
もし偶然だとしたら軽い奇跡だと思ったのが、ハンとデッカード(ジェイソン・ステイサム)が特殊部隊相手に共闘するシーン。前作『ジェットブレイク』の「死んだはずのハンが生きていた!」というネタの是非は脇において、デッカードがハンを殺した(少なとも当人はそう信じていた)事実は変わらない。
デッカードは『ワイルド・スピードICE BREAK』(17)や『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(19)でドミニクやホブス捜査官(ドウェイン・ジョンソン)とはずいぶん距離が縮まっている。しかし「ハン殺しを許していいわけではない」というファンがネット上で「ジャスティス・フォー・ハン」運動を起こし、それがハンの復帰に繋がった経緯もある。
デッカードが眼の前に現れたハンを見て、秒速で「復讐に来た」と判断して反撃に出るあたりはいかにも武闘派のデッカードらしいが、特殊部隊に襲撃され、協力して自分たちの命を守ることになる。そしてデッカードは、ハンを後ろから撃とうとしていた敵を射殺して、「これでおあいこだ」と過去の経緯をチャラにする宣言をするのである。
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「命を救ったから殺(そうと)したことは許せ」とはずいぶんと一方的な理屈だが、ハンだって殺されたフリをしていたので、どっちもどっちといえるかも知れない。それよりも重要だと感じたのが、「ハンが気づいていなかった背後の敵を撃つ」という行為が、『EURO MISSION』でハンの恋人だったジゼル(ガル・ガドット)がハンの命を救った図式と同じであること。アクション映画によくあるシチュエーションとはいえ、意図的にシンクロさせたのだとしたら芸が細かい。
ジゼルはハンのために(少なくとも表向きは)命を落としているのでデッカードとは重みが違うが、ジゼルの影が重なることで、なかなか納得しづらい「ジャスティス・フォー・ハン」問題に終止符を打っていい、と思えたファンもいるのではないか。ルテリエ監督によると「ジャスティス・フォー・ハン」は一本だけで解決するものではないそうだが、少なくとも筆者は、デッカードとハンの当事者間ではもう手打ちでいい気持ちになっている。