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『ブレイブハート』史実よりも映画的な面白さに力を注いだ、大興奮の歴史スペクタクル ※注!ネタバレ含みます

(c)Photofest / Getty Images

『ブレイブハート』史実よりも映画的な面白さに力を注いだ、大興奮の歴史スペクタクル ※注!ネタバレ含みます

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史実として受け止めるには注意が必要



 初めて『ブレイブハート』を観たとき、私は大きな興奮に包まれ、3時間近い上映時間があっという間に思えた。何よりもこれ一本で、スコットランドの英雄、ウィリアム・ウォレスの半生について大体のことを理解したつもりになっていた。


 本作は凄まじいパワーを持った映画である。渾身の叫びに満ちているし、自由を希求する崇高な魂によって貫かれてもいる。だが、もしも夏休みの自由研究などでスコットランドの独立戦争などを取り上げるようなことがあるならば、この映画は注意が必要だ。メル・ギブソンも言っていることだが、本作は歴史的な正確さよりも、映画的な面白さや見せ方を最優先にして作られているからだ。


 題材に興味を持つ”きっかけ”として最適の作品であることは間違いないが、興奮し、拳を突き上げ、はたまたウォレスの最期に思い切り涙して「はい、おしまい」ではなく、きちんと復習することで補完されていく作品というべきか。そのすべてを指摘したいのも山々だが、文字数の都合もあるので、本稿では3点に集約して注意すべき点について述べたい。



『ブレイブハート』(c)Photofest / Getty Images



青塗り&キルトは本当か?



 まず、ウォレスやその仲間の戦士たちが戦場で着用するキルトや青塗りメイク。鑑賞中は意外とすんなり受け入れてしまうこれらの要素だが、そもそも顔に青塗りなどを施すのはもっと太古の戦いにおいてのこと。さらにスコットランドの伝統衣装でもあるキルトが定着するのはもっと後の時代になってからのようだ。


 じゃあ、実際はどんな格好をしていたのか。それを知る手がかりとしては、現代に遺されているウィリアム・ウォレスの銅像などが最適のものとなるだろうが、例えばスコットランドのエディンバラ城の城門の両サイドには、左にロバート・ザ・ブルース(本作の中でアンガス・マクファーデンが演じる)、右にウォレスの銅像が守り神の如く立っている。だが二人ともくさりかたびらを頭から足先にまでしっかり着込んだ、中世の騎士たるスタイルだ。青塗りもキルトもなし、である。


 とはいえ、筆者がエディンバラを訪れた際、観光ショップではまるっきり映画を模した「青塗り&キルト」のウィリアム・ウォレスのマグネットが当たり前のように売られていた。もはや歴史的な正確さの域を越えて、とりわけ観光客にとっては、メル・ギブソンのウォレス像がスタンダードの一つとして認識されているのかもしれない。





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