※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
『ブレイブハート』あらすじ
13世紀末のスコットランド。ウィリアム・ウォレスは、残虐で冷酷なイングランド王エドワード1世の侵略によって家族を皆殺しにされる。成人すると故郷へと戻り、そこで幼なじみのミューロンと恋に落ちたが、彼女はイングランドの兵士に殺害されてしまう。イングランドへの怨念と復讐に燃えたウォレスは、反乱軍を組織し、抵抗運動を続ける。圧政に苦しむ民衆はウォレスを支持し、ウォレス率いる反乱軍は連勝を重ね、ついにはスコットランドの王位継承者と目されるロバート・ザ・ブルースをはじめとする支配者層にも蜂起を促すまでになった。しかし土壇場で保守的な貴族がウォレスを裏切り、反乱軍は大敗してしまう…。
Index
- アカデミー賞で対決した師弟関係のふたり
- 史実として受け止めるには注意が必要
- 青塗り&キルトは本当か?
- 見事な戦闘シーン。でも”橋”がない⁉
- ウォレスとイザベルの逢引という衝撃展開
- そして歴史はなおも続いていく…
アカデミー賞で対決した師弟関係のふたり
『ブレイブハート』(95)は1996年のアカデミー賞で作品賞、監督賞を含む5部門の受賞を成し遂げた。
思い返すと、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)がぶっちぎりだった前年に比べて、この年の作品賞ノミネーションには実に多彩な顔ぶれが並んだ。当時の気風としては『アポロ13』(95)と『ブレイブハート』の一騎打ちの様相が強かった気もするが、いま改めて候補作(『アポロ13』『ブレイブハート』『ベイブ』『いつか晴れた日に』『イル・ポスティーノ』)を頭の中に並べてみると、私の意識はどういうわけか『ベイブ』(95)へ行く。言わずと知れたジョージ・ミラーが製作と脚本を担った名作である。
ミラーといえば『マッド・マックス』でメル・ギブソンを一躍スターへと押し上げた立役者。しかし決してそれだけではなく、ギブソンは、若手時代に一緒に仕事をしたジョージ・ミラーやピーター・ウィアーなどの監督たちについて、「彼らは私にとって映画作りの先生だよ」と述懐している。彼らはギブソンが映画作りに興味を持って矢継ぎ早に質問すると、それに対して面倒臭がらず、ましてやテクニックを出し惜しみすることもなく、一つ一つ丁寧に教えてくれたのだそうだ。(『ブレイブハート』音声解説より)
『ブレイブハート』予告
もしギブソンがキャリアの初期にミラーと出会っていなかったら、はたまた『マッドマックス』3部作のような途方もない大作の映画づくりを経験していなかったら、『ブレイブハート』のようなスケールの作品は果たして生まれ得ただろうか。
そういった視点に立つと、96年のアカデミー賞作品賞部門において『ベイブ』と『ブレイブハート』の「師弟対決」こそ最大の見どころだったのでは…という気持ちが抑えきれなくなる。