そして歴史はなおも続いていく…
本作の終盤、ウォレスは処刑台で「フリーダム!」と叫びながら死に、その意思を継ぐかのように、ロバート・ザ・ブルース率いるスコットランド軍が英国軍を破ったバノックバーンの戦いが添えられる。
また、本作では描かれないが、イザベラがこの後に辿る運命も波乱万丈だ。
彼女はある意味、鋼鉄の意志を持った人だった。というのも、王となった夫エドワード2世が数々の失敗を重ねて無能ぶりをあらわにするや、愛人のロジャー・モーティマーと共にクーデターを起こして王に廃位を迫り、代わりに我が子をエドワード3世として即位させたのである。
『ブレイブハート』(c)Photofest / Getty Images
幽閉されたエドワード2世はこの後、拷問を受けて、一説によると火かき棒を口から肛門まで貫かれるなど散々なことをされて死んだらしい。ウォレスの死に様に並ぶほどの悲惨さだ。まったく、この時代の権力者たちは本当に情け容赦がない。
この一連の出来事はデレク・ジャーマン監督作『エドワードⅡ』(91)でも描かれている。イザベラ役を演じるのはティルダ・スウィントン。この演技でヴェネツィア国際映画祭の女優賞を獲得し、国際的な知名度を獲得するに至った。『ブレイブハート』から数珠つなぎで英国史の知識を広げたい人にはお勧めの作品だ。
参考資料:
・『ブレイブハート』DVD収録 メル・ギブソン音声解説
https://screenrant.com/braveheart-behind-scenes-making-of-hidden-trivia/
・「物語 イギリスの歴史(上)」君塚直隆著、中公新書
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
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