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『救命士』スコセッシとシュレイダー、20年越しの『タクシードライバー』 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『救命士』スコセッシとシュレイダー、20年越しの『タクシードライバー』 ※注!ネタバレ含みます。

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『タクシードライバー』との類似性



 前述したように、原作の時点で『タクシードライバー』との類似点が多い『救命士』だが、スコセッシは今作を映画化するにあたり、自身でも『タクシードライバー』的要素をふんだんに盛り込んでいる。それは、両作品とも車の外観が映し出され、主人公の目元にライトが照射されているショットで映画が始まるところからも明らか。車の外観をヨリで捉えたショットや車窓越しから街や人々を映し出すショット(そこに主人公のナレーションが入る)といった、『タクシードライバー』で用いられた演出は本作でも多用されており、スコセッシ自身がカメオ出演している点(『救命士』では声だけ)や、主人公フランクの上司がいるオフィスが、トラヴィスが勤めるタクシー会社のオフィスと非常に似ているなど、類似点を上げてみると枚挙にいとまがない。まるでセルフリメイクしているかのようだ。



『タクシードライバー』予告


 もちろん、似ているだけに終始している訳ではなく、『タクシードライバー』から約20年の間に培われた演出もふんだんに盛り込まれており、ランナーズハイになっている救命士たちの心情と呼応するかのように、夜間とは思えないほど照明はギラつき、カメラは忙しなく動き回る。ひっきりなしに楽曲はかかり続け、それをアップテンポな編集で魅せていく。このアプローチは、『グッドフェローズ』を経て『カジノ』で確立した演出をさらに過剰に進化させた、まさに90年代スコセッシの極北といってもよいだろう。スコセッシは90年代を通して確立した演出方法で、再び『タクシードライバー』を語り直そうとしているのである。


 そして、本作と『タクシードライバー』の類似点を語る上で忘れていけない男がいる。『タクシードライバー』の脚本を手がけた、本作の脚本家でもあるポール・シュレイダーだ。『救命士』はスコセッシの映画であると同時に、強烈なまでに脚本家ポール・シュレイダーの映画でもあるのだ。




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