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『インセプション』“虚構のリアリティー”をCGに頼らず深化させた、ノーランの傑作

©2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

『インセプション』“虚構のリアリティー”をCGに頼らず深化させた、ノーランの傑作

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パリ街角での爆薬を使わない“爆発”シーン



 そうしたノーランの姿勢が端的に表れたのが、パリの街頭に作ったオープンカフェ風のセットでロケ撮影を敢行したコブ(レオナルド・ディカプリオ)とアリアドネ(エレン・ペイジ)のシークエンス。屋外の席に座る2人の周囲で、本や箱、野菜や果物が爆発してはじけ飛ぶ。


 撮影許可を現地当局から得る際、本物の爆薬を使うことを禁じられたスタッフは、高圧の窒素を使ってこれらの小物を吹き飛ばすことを選択。これを複数のアングルから6倍速の高速撮影で収録し、映像の再生速度を巧みコントロールして編集することにより、はじけ飛んだ破片が空中で急減速して静止するユニークな効果を生み出したのだ。


“重力の異常”はいかに作り出されたか



 4層の夢の中で並行して進むコブたちのミッションでは数々のスペクタクルが展開するが、とりわけ独創的なのはやはり、ホテルの廊下でアーサー(ジョセフ・ゴードン=レビット)が敵と格闘するシークエンスだろう。第1層の夢でコブたちの乗った車が橋から自由落下する際、第2層の夢の物理法則が崩れ、ホテルの廊下で重力異常が生じる。アーサーと敵の男は組み合ったり離れたりしながら、廊下の床から壁、壁から天井へと浮遊するように移動する。観る者の平衡感覚を幻惑させるかのようなこのシークエンスは、どのような方法で撮影されたのだろうか?


『インセプション』メイキング


 製作陣は長さ30メートルの廊下を作り、その廊下のセットが回転軸になるように大きな輪を外側に設置。これを強力な大型モーター2基で回転させる。廊下の内側に向けたカメラも回転するセットに固定されている。こうしたセッティングで回転する廊下の中で俳優2人のアクションを撮影すると、廊下とカメラが同期しているために静止して見える廊下の中で、俳優2人が床から壁へ、壁から天井へとはね回っているように感じられる映像になるのだ。



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