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『黙秘』冒頭の狂気と震撼が巧みに反転、スティーヴン・キング原作の重厚作

(c)Photofest / Getty Images

『黙秘』冒頭の狂気と震撼が巧みに反転、スティーヴン・キング原作の重厚作

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30代と50代を演じ分けたベイツの徹底した役作り



 なにしろ『ミザリー』で旋風を巻き起こしたキャシー・ベイツなのだから、キャッスルロック・エンターテインメント(ロブ・ライナーらが率いる制作会社)が『黙秘』の映画化を決めた時点で、ベイツの主演が決まっていたのは当然である。


 その大きな信頼と期待に応えて、ベイツ自身の役作りも徹底して行われた。まずは作品の舞台となる米メイン州の方言をみっちりと叩き込むのと同時に、主人公ドロレスの30代と50代を演じ分けるにあたり、しっかりコーチングを受けて一つ一つの動きに年齢的な特徴を帯びさせていったという。


 さらにメイクやウィッグに関してもこれらの演じ分けがスムーズにいくよう、エキスパートを呼んで徹底した試行錯誤が繰り広げられた。こうした取り組みによって、過去と現在が入り乱れる本作において、各場面でドロレスが一体何歳ごろの設定なのか、観客がひと目で判別できる状態が築き上げられていった。



『黙秘』(c)Photofest / Getty Images


 これほど情熱を注ぎ、なおかつ娘役のジェニファー・ジェイソン・リーやお屋敷の女主人(老女)役の英国女優ジュディ・パーフィットらと化学反応を巻き起こしながら、女性同士の濃密なる人間関係を表現してみせたキャシー・ベイツ。こうした撮影を通じた充実感ゆえか、彼女はドロレス役をこれまで演じた中で最も気に入ったものの一つとして掲げている。


 本作はゴールデングローブ賞やアカデミー賞への候補入りはひとつも果たしていないが、それでも演じた本人にとって特別な達成感を抱くに値する、忘れ難い一作だったようだ。





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