『クルーレス』あらすじ
敏腕企業弁護士の父を持ち、ビバリーヒルズの邸宅に住むシェールは、おしゃれとパーティに夢中な高校生。父親がかつて結婚していた相手の連子で義兄にあたるジョシュからは、いつもその軽薄さをたしなめられているが、シェールは聞く耳を持たない。ある日、自分の授業評価を上げてもらうため、堅物の教師に同僚との恋をお膳立てすることに成功したシェールは、他人の恋の橋渡しに夢中になる。「クルーレス(ダサい)」な転校生タイをクールに変身させ、彼女にぴったりなボーイフレンド探しに奔走するが、変身後のタイが自分よりも人気者になったことですっかり自信を失ってしまう。やがて自らの行いを振り返りはじめたシェールは、ある真実に気づくことに。
Index
- 『ブックスマート』に影響を与えた学園コメディ
- 学園風景を女の子の視点と語りで描くことの重要性
- 衣装デザイナー、モナ・メイが作り上げた斬新なファッション
- 高校内のヒエラルキーと、そこからの目覚め
- 賢く逞しいヒロイン像を提示した『クルーレス』
『ブックスマート』に影響を与えた学園コメディ
オリヴィア・ワイルドが監督した『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)が公開された際、この映画が過去の学園映画のスタイルを見事に踏襲しながら、いかにそれらをあざやかに更新したかを、人々は考えずにいられなかった。そこで過去の名作として言及されることが多かったのは、ジョン・ヒューズの『ブレックファスト・クラブ』(85)、それからエイミー・ヘッカーリングが監督した『初体験/リッジモント・ハイ』(82)と『クルーレス』(95)。いまよりも女性監督の地位がさらに低かった1980年代、90年代に、二つの学園もの映画で時代を席巻したエイミー・ヘッカーリングの存在と、彼女がつくった「女の子たちの学園映画」は、『ブックスマート』にたしかな影響を与えたはずだ。1984年生まれのオリヴィア・ワイルド自身、幼い頃は『初体験/リッジモント・ハイ』と『クルーレス』を見て育ったと語っている。
『クルーレス』予告
エイミー・ヘッカーリングが監督としてデビューしたのは、彼女がまだAFI映画学校を卒業して間もない頃のこと。期待の新人としてユニバーサルに雇われた彼女は、若い俳優たちを起用し、サンティアゴの高校を舞台にしたセックス・コメディを撮ることになる。原作は、まだ監督になる前の若きキャメロン・クロウが1979年に書いた小説。当時20代だったキャメロン・クロウが、自分の母校リッジモント高校に潜り込み、高校生たちのリアルな日常を描いた小説はベストセラーになった。
キャメロン・クロウが自ら脚本化を手がけた映画版は、女子高校生の初体験とその行方を、多種多様な高校生たちの姿とともに描写し、大ヒット。主演のジェニファー・ジェイソン・リーとその友人役のフィービー・ケイツは青春映画のスターとなり、マリファナに夢中なサーファー役を演じたショーン・ペンは、その後数々の映画に出演する名優となった。また、まだ名が知られる前のフォレスト・ウィテカーやニコラス・ケイジも小さな役で出演している。
長編デビュー作で大きな注目を集めたエイミー・ヘッカーリングがさらなる成功を収めたのは、1989年に公開された『ベイビー・トーク』。不倫相手との子供を妊娠し、シングルマザーとして子を育てることを決めた女性が、出産時に偶然自分を助けてくれたタクシードライバーと結ばれるまでを描いたロマンティック・コメディ。ただし、映画の主人公は女性が妊娠した子供マイキー。精子の状態から生後間もない赤ん坊の状態まで、ブルース・ウィリスがマイキーの声を演じ、大人たちが右往左往する様を実況したこのコメディはまたも大ヒット、一大ブームを巻き起こした。