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『クルーレス』賢く逞しいヒロイン像を提示した傑作学園コメディ

(c)Photofest / Getty Images

『クルーレス』賢く逞しいヒロイン像を提示した傑作学園コメディ

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学園風景を女の子の視点と語りで描くことの重要性



 新たなコメディの旗手となったヘッカーリングが次に選んだのは、デビュー作以来の学園もの。最初はテレビシリーズとして、元気な女の子が巻き起こす高校生ドラマを企画するが、製作側の都合で実現せず、企画はそのまま映画版へと引き継がれる。物語の原案となったのは、ジェイン・オースティンの小説「エマ」。現代版では、ビバリーヒルズにある高校が舞台、学校の上位グループに位置する少女シェールが、クルーレスな(ダサい)転校生をオシャレに変身させ、その恋のお相手を見つけようとする物語に変換された。 


 主役のシェールに抜擢されたのは、当時エアロスミスのMVに出演していたアリシア・シルヴァーストーン。その親友役ディオンヌ役にはステイシー・ダッシュ、クルーレスな転校生タイ役は2009年に急逝したブリタニー・マーフィ、そしてシェールの義兄ジョシュ役にはポール・ラッドと、期待の若手俳優たちが起用された。



『クルーレス』(c)Photofest / Getty Images


 実は企画を聞いた製作者たちは、当初、女子高生の視点だけで語られる青春映画という案に難色を示し、男の子たちから見た恋愛観やセックス事情を盛り込むべきだと助言したという。女の子の物語だけでは男性客が見込めないとの判断だったのだろう。だが、それは監督にとってありえない改変だった。シェールという現代の女子高校生の視点だけで物語を語ることこそ、この映画のもっとも重要な点だったのだから。


 結果的に、ヘッカーリングの主張は守られ、映画はあくまでシェールの物語として描かれることに落ち着いた。もし製作者の男性たちが主張したように、男性視点を盛り込んだ物語になっていたら、『クルーレス』は、公開後数十年経っても語られ継ぐような伝説的な青春コメディとはならなかっただろう。この映画が斬新だったのは、主人公シェールがつねに超絶早口なモノローグで自分の考えを語りつづける点にある。彼女はファッション、友人、家族、恋愛、学校の成績について随時ぺちゃくちゃと喋り倒しながら、ときには社会問題や人間関係に悩み、かと思えば、合間に店のウィンドウに飾られた洋服に気を取られたりもする。そのとりとめのなくスピーディーな一人喋り(もちろんすべては心の内側で行われる)によって導かれるからこそ、映画はこれまでにない女の子たちの学園コメディとして人々を魅了し、多くの映画人にも影響を与えたのだ。





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