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『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(後編)

(c)Photofest / Getty Images

『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(後編)

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プルス・ウルトラの創設者たち:ヴェルヌ



 劇中では、エッフェルとエジソン、ヴェルヌ、テスラらが「プルス・ウルトラの創設者たち」と説明されている。エジソンが、この場所で暮らしていたエッフェルを訪ねたのは歴史的事実で、実際エッフェル塔内に蝋人形も設置されている。しかし、テスラとヴェルヌに関してはフィクションだ。


 実はヴェルヌも万博との縁は深く、彼は1867年に開催された「第2回パリ万博」を訪問している。この博覧会には、プロンジュールというフランス海軍の潜水艦模型が展示されており、ヴェルヌはここから直接ヒントを得て、三年後に小説「海底二万里」を出版している。


 ちなみに「海底二万里」はディズニーによって、『海底2万マイル』(54)として映画化されるが、この時に造られたセットの一部が、1955年に開業した「ディズニーランド」(現ディズニーランド・パーク)のトゥモローランド・エリアにおけるアトラクション「20,000 Leagues Under the Sea(海底2万マイル)」として再利用された。


 そして、ヴェルヌ最大のヒット作である「月世界旅行」だが、これも1901年にニューヨーク州バッファローで開催された「パン・アメリカ博覧会」のアトラクション「A Trip to the Moon」に影響を与えている。これは、世界初のシミュレーションライドであり、現在の「スター・ツアーズ: ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー」の御先祖様である。だが、「A Trip to the Moon」のデザインは“空飛ぶ船”といった感じで、ヴェルヌが考案した砲弾式宇宙船とはかなり異なる。



『トゥモローランド』(c)Photofest / Getty Images


 「スペクタクル」もさすがに砲弾式ではなく、古典的なロケットとして描かれた。それでも、わざわざ月の近くまで立ち寄るのは、「月世界旅行」へのオマージュだというのは明らかだ。


プルス・ウルトラの創設者たち:テスラ



 もう一人のテスラは、ウェスティングハウス社と開発した二相交流発電機が、1893年の「シカゴ万博」に採用されている。この交流送電に関しては、直流派であったエジソンとの電流戦争(劇中でも少し触れている)が有名で、『エジソンズ・ゲーム』(17)や『テスラ エジソンが恐れた天才』(20)といった、映画の題材になっている。


 またテスラは、無線で地球上のあらゆる場所に電力を送り届ける、無線送電システムの構想を抱き、実際ニューヨーク州ロングアイランドに、ウォーデンクリフ・タワーを建設して実験も行った。だがテスラは、地震兵器や霊界通信装置(*1)といった奇想を語るなど、マッドサイエンティストとして語られることも多い。そこで、「もし、この霊界通信装置が成功していたら」というのが、プルス・ウルトラの根拠になったのだろう。


*1 実際は、エジソンも霊界通信機を研究していた。また電球や映写機のように、本当はエジソンが発明したものではないものも少ない(電球はフィラメントの改良、映写機は他人のアイデアの購入)。映画事業では、ジョルジュ・メリエスの海賊版を作って儲けるなど、トンデモさんとしては、エジソンの方が色々と性格的にヤバい人物だったと言える。



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