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『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(後編)

(c)Photofest / Getty Images

『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(後編)

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希望ある世界



 ここからの展開はネタバレになってしまうため、詳しくは書かない。ただ正直、ニックスというキャラクターの存在に、ムリヤリな感じを抱いてしまった。別にこの映画には、類型的な悪役など不要だったのではないだろうか。


 さらには、ラストのメッセージがあまりに直接的で、説教臭いと感じる人もいるのではないか。これはディズニーのCEOである、ロバート・A・アイガーの影響があるのかもしれない。彼は、リベラルな政治活動家でもあり、人種差別やLGBTQといった問題について熱心なのは有名だが、地球温暖化など環境問題に関しても自ら取り組んでいるからだ。ただ筆者は、こういうストレートな表現は嫌いではない。少なくとも、絵画にスープをぶちまけている環境活動家よりは、意味のあることだろう。



『トゥモローランド』(c)Photofest / Getty Images


エンドクレジットの秘密



 エンドクレジットでは、エッフェル塔(第4回パリ万博)、グローブ・セレステ(第5回パリ万博)、科学館のカリヨンタワー(1933年のシカゴ万博)、トライロン&ペリスフィア(1939年のニューヨーク世界博)、ニューヨーク州パビリオン(1964年のニューヨーク世界博)といった、過去の様々な博覧会のパビリオンをアレンジした、CGアニメーションで見せてくれる。


 そのレトロなタッチは、1939年の「ニューヨーク世界博」のポスターを手掛けた、オーストリアのグラフィックデザイナー、ジョゼフ・バインダーを意識したのだろう。そして、このアニメの最期に登場するのは、もちろんディズニーランド・パークのトゥモローランドだ。つまりこの短い時間で、本作のサブテーマが「博覧会からディズニーランドに至った歴史」であることを表しているのだ。



文:大口孝之(おおぐち たかゆき)

1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、女子美術大学専攻科、東京藝大大学院アニメーション専攻、日本電子専門学校などで非常勤講師。主要著書として、「3D世紀 -驚異! 立体映画の100年と映像新世紀-」ボーンデジタル、「裸眼3Dグラフィクス」朝倉書店、「コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション」フィルムアート社



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