1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. プレステージ
  4. 『プレステージ』クリストファー・ノーランの真の“偉業”を問う傑作
『プレステージ』クリストファー・ノーランの真の“偉業”を問う傑作

(c)Photofest / Getty Images

『プレステージ』クリストファー・ノーランの真の“偉業”を問う傑作

PAGES


Index


人間の弱さが物語を動かす



 『オッペンハイマー』(23)でアカデミー賞を受賞したことにより、クリストファー・ノーラン監督への注目度が高まっている。これまでヒットメーカーとしての地位を築いていたのはファンにはご存知のとおり。すでに過去の作品も高く評価されていたが、今回の受賞はアカデミー賞がようやくそれに追いついた、といったところか。


 『オッペンハイマー』には時間軸の錯綜に加えて、クライムストーリーというノーラン作品ならではの味がある。政治的に立ち回る悪党たちの、さながら見本市のような映画。主人公オッペンハイマーにしても例外ではない。もちろん、主人公だからその人間性は深く掘り下げられており、同情の余地はあるものの、それでもグレーな感はぬぐえない。


 思えば、ノーラン作品の多くは人間の弱さにスポットを当て、それが物語を動かしてきた。弱さとは人が直面する最初の悪であり、すべての悪はそこから派生する。『ダークナイト』(08)のヴィラン、ジョーカーはその究極といえるだろう。ただし、ノーランはジョーカーを恐怖の対象としてとらえており、意図的にその過去を描いていないので、悪党としてのカリスマ性以外には共感を寄せられる部分がない。



『プレステージ』(c)Photofest / Getty Images


 その点、本稿の主役である『プレステージ』(06)の主人公ふたりは、モラルを失っていく過程も比較的わかりやすい。ふたりのマジシャンは、なぜ破滅の道をたどっていったのか? 運命の皮肉とも思える状況を描いた、このサスペンススリラーの魅力を、作品の背景とともに語っていこう。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. プレステージ
  4. 『プレステージ』クリストファー・ノーランの真の“偉業”を問う傑作