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『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』映画史を塗り替えた、20世紀最大の神話

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』映画史を塗り替えた、20世紀最大の神話

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英雄譚の原型的構造



 ルーカスが『スター・ウォーズ』の構想を練り始めたのは、管理社会に対する恐怖を描いたディストピアSF『THX 1138』(71)を完成させた後のこと。もともとは、自分がファンだった1930年代の連続活劇映画『フラッシュ・ゴードン』(36)をリメイクする野望を抱いていたが、映画プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスがすでに映画権を買い取っていたことを知り、オリジナルのストーリーを創り上げたのである。


 この映画には、ルーカスが語るところの「子供のころに好きだった本や映画やコミックのすべて」が詰まっている。主人公ルーク・スカイウォーカーの故郷タトゥイーンは、フランク・ハーバートの小説「デューン」に登場する惑星アラキスに酷似しているし、雄大な砂漠の風景は『アラビアのロレンス』(62)を彷彿とさせる。


 C-3POとR2-D2の関係性は『隠し砦の三悪人』(58)の太平と又七、ハン・ソロの人物造形は『用心棒』(61)の桑畑三十郎と、黒澤映画からのインスパイアも見受けられる。デス・スターに攻撃を仕掛けるクライマックスは、第二次世界大戦を描いた戦争映画『暁の出撃』(55)をモデルにしたことは有名な話だ。


『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』予告


 さらにルーカスは、神話学者ジョーゼフ・キャンベルが発表した研究本「千の顔を持つ英雄」を参考にして、「①旅立ち」、「②通過儀礼」、「③帰還」という英雄譚の原型的構造を組み込んだ。伝統的な神話と「12歳だったころのガラクタ」を掛け合わせることによって、彼は20世紀最大の神話を生み出したのである。


 だが、この企画は映画会社から敬遠された。当時SFというジャンルが一般層に受け入れ難いジャンルだったこともあって、ユナイテッド・アーティスツからも、ユニバーサル・ピクチャーズからも、パラマウント・ピクチャーズからも、プロジェクトへの出資を断られてしまう。唯一興味を示してくれたのは、20世紀フォックスの社長アラン・ラッド・Jrだけ。彼は、『アメリカン・グラフィティ』(73)で見事な青春映画を撮り上げたルーカスの才能を信じていた。


 結果的に、『スター・ウォーズ』の配給を決めたアラン・ラッド・Jrの決断は大正解だった訳だが、本人は内容をきちんと理解していなかったことを認めている。


「今でこそ、この映画を観てそれが何であるかを知ることができるけど、観る前はこんなタイプの映画はなかったし、説明することもできなかった。毛むくじゃらの犬が宇宙船を操るような映画って、つまり何なんだ?」(*2)




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