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『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』映画史を塗り替えた、20世紀最大の神話

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』映画史を塗り替えた、20世紀最大の神話

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セリフがいっさい無いエンディング



 監房に囚われていたレイアを救い出すも、ノープランすぎる救出作戦に「マヌケね」と言われてしまうルークとハン・ソロ。「鼻っ柱が強い。でもホレそうだぜ」と語るハンに対し、ルークは複雑な表情をみせる。出会ってわずか数分たらずで、レイア姫をめぐる三角関係ができあがっている。ゴミ処理区画に逃げ込み、あやうく粉砕機に潰されかけるが、R2-D2のファインプレーで九死に一生を得る。危機的状況を脱したことで、今度は仲間意識が築かれる。淡い恋慕と友情。見事な手際だ。


 オビ=ワンはダース・ベイダーとライトセーバーを交え、突如悟ったかの表情を浮かべてベイダーの攻撃を真正面から受ける。師の最期に絶叫するルーク。この瞬間、フォースを学ぶ者だった彼は、フォースを操る者へと覚醒する。師匠を失う「②通過儀礼」を経て、彼は精神的な成長を遂げたのだ。


 デス・スターから脱出したミレニアム・ファルコン号は、追ってきたTIEファイターとの空中戦に突入。ジョン・ウィリアムズの音楽と完全にシンクロした、ショットの繋ぎが本当に素晴らしい。「1:砲撃するTIEファイター」、「2:銃座から応戦するルーク」、「3:銃座から応戦するハン」、「4:状況を見守るレイアとチューバッカ」、「5:消火活動でサポートするR2-D2とC3PO」の5ショットが、巧みにエディットされている。チューバッカが左を向いてから顔を正面に戻すと、次はレイアが正面から右を向くショットをインサートしているのも、編集にリズムを生み出している。


 戦いは、いよいよデス・スターの最終決戦へ。Xウイングに搭乗しようとするルークは、メカニックからR2を別のドロイドに交換するかどうか尋ねられるが、「まさか。戦友なんだ」と答える。出会ってから数日しか経過していないはずなのに、修羅場を経てR2-D2はすっかり相棒になっていた。出撃したルークは見事目標に魚雷を命中させて、デス・スターを破壊するが、R2は被弾してボロボロの姿になってしまう。



(C)2024 Lucasfilm Ltd.


 ラストの「王座の間」のシークエンスでは、レイアからルーク、ハン、チューバッカにメダルが授与されるのだが、その様子を見つめるC-3POだけを画面に収めることによって、「R2は元通りに修復できなかったのでは?」という小さなサスペンスが生まれている。観客の不安がピークに達した頃に、カメラが下にパンすると、そこに映し出されるのは元気なR2の姿。C-3POとR2-D2の身長差をうまく利用した映像トリックだ。


 そしてこのシークエンスは、俳優たちのセリフがいっさい無いサイレント・パートでもある。トーキー以前の映画黎明期のような演出で、ジョージ・ルーカスはこの物語を締め括った。あまりにも特殊な、それでいて王道なエンディング。英雄は遂に「③帰還」を果たした。


 特撮工房ILMによるSFXは、確かに映画の歴史を変えた。ジョン・ウィリアムズの音楽は、間違いなく永遠に語り継がれる名曲だ。登場するキャラクターもみんな魅力的。だが筆者は、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を普及の名作へと押し上げたのは、何よりもまずジョージ・ルーカスの比類のないストーリーテリング能力にあると確信している。


(*1)https://time.com/4153583/star-wars-the-years-best-movie/

(*2)https://www.forbes.com/sites/judebrennan/2014/05/01/the-man-who-green-lit-star-wars-the-most-important-movie-mogul-youve-never-heard-of/?sh=7ed6663f2f78



文:竹島ルイ

映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。



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