監督について
監督のジョー・ジョンストンは、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校に在学中、ジョージ・ルーカスの従業員募集広告に応募した。そしてジョン・ダイクストラが設立したILMに参加し、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)における視覚効果シーンのストーリーボードを担当した他、デザイナーとしてラルフ・マクウォリーのコンセプトアートをベースにして、ミレニアムファルコン、Xウィング、Yウィング、スター・デストロイヤー、デススターの最終デザインを仕上げた。
その後、テレビシリーズの『宇宙空母ギャラクティカ』(78)に参加後、ILMは分裂してしまう。ジョンストンは、ダイクストラと袂を分かち、ルーカスがサンフランシスコに設立した新ILMに加わった。彼はここで、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80)、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)などを担当。代表的な仕事に、ヨーダ、ボバ・フェット、AT-ATウォーカーなどのデザインがある。
だがジョンストンは、この仕事に嫌気を感じ始めていた。『ジェダイの帰還』終了後に多くの仲間たちがILMを去って行ったのに合わせ、貯めた金で旅行することに決める。しかしルーカスは、ジョンストンに彼の母校である南カリフォルニア大学・映画芸術学部に通うことを提案。授業料もルーカスが払ってくれた。
そして卒業後、『ミクロキッズ』(89)で監督デビューする。その後は、『ロケッティア』(91)、『ジュマンジ』(95)、『ジュラシック・パークIII』(01)、『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(11)など、順調にキャリアを重ねて来た。本作は、彼の代表作と言って良いだろう。
あらすじ⑥
その晩、眠れなかったホーマーは、ライリー先生からもらった本を引っ張り出し、ロケットの弾道を求める計算式に徹夜で取り組む。それは炭鉱の昼休みまで続き、作業終了後は帰宅しないでクエンティン(クリス・オーウェン)の自宅を探すことにした。彼は、遠方に住んでいたのでヒッチハイクで行き、森の中にひっそり建つボロ家(*2)を見付け出す。
クエンティンは、狭い部屋で幼い兄弟たちといっしょに暮していた。彼は、ホーマーが自力で導き出した方程式に感心し、「オークXIII号」の推定落下地点を1.9km先と計算した。そして、「翌朝いっしょに捜索しよう」と約束するが、「この家のことはロイやオデル(チャド・リンドバーグ)には黙っていてくれ」と頼む。
鉱山を欠勤したホーマーはクエンティンと共に、「ケープ・コールウッド」の発射地点から、ロープで実測を始める。そして森の奥深くまで入って行ったものの、推定落下地点にロケットの残骸は見当たらなかった。だが、風の影響を考慮してみると、沢の中に突き刺さっている「オークXIII号」が見付かる。
『遠い空の向こうに』(c)Photofest / Getty Images
彼らがその機体を持って学校に行き、クラスは大騒ぎとなる。校長がその声を聞き、教室に入って来て、退学したはずのホーマーがいることを咎める。だがホーマーは、校長の前で方程式を解き、火災が起きた4.8kmまで「オークXIII号」が届かないことを証明してみせた。
校長は、4人組を車に乗せて警察署に向かう。そして証拠として提出されたロケットが、照明弾のものだと見抜いた。その帰り、校長はホーマーに復学を勧める。そしてホーマーの自宅で、警察から返還された機材を整理し、作業の再開を始める。新たな目標は、本格的なラバール・ノズルの開発だった。
しかしそこにジョンが割り込んできて、メンバーを家に帰らせ、ホーマーの無断欠勤を激しく攻めた。そして、今すぐ夜勤に行くように命じるが、ホーマーは炭鉱に戻ることをキッパリ断り、「僕は宇宙を目指す」と答える。
*2 当時この地域には、石炭産業しか存在しなかった。そのため、廃坑になった鉱山で働いていた人々や、働き手を事故や病気で失った家族は、町から追い出されてしまう。そのためクエンティンのように、隠れてギリギリの生活を送っていた人々も少なくなかった。