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『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』父と子の物語として構築された偉大なる続編

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』父と子の物語として構築された偉大なる続編

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『地獄の黙示録』との共通項



 ルーカスは「プロット上の仕掛けは多いとは言えない」と語っているものの、本作にはひとつ大きな仕掛けが存在する。ルーク・スカイウォーカーの父親が、ダース・ベイダーだったというスーパー・サプライズだ。「I am your father」という告白をルークは受け止めきれず、思わず「No!」と絶叫する。今となっては世界的常識のひとつと言って差し支えないだろうが、『帝国の逆襲』公開当時はとてつもない衝撃をもって迎えられた。この事実が漏洩されないように、撮影現場では鉄桶水を漏らさぬセキュリティ対策が敷かれていたほど。


 ダース・ベイダーを演じるデヴィッド・プラウズには「オビ=ワンがお前の父親を殺した」というセリフを言わせ、後から吹き替えで「私がお前の父親だ」というセリフに入れ替えたほどの徹底ぶり。デヴィッド・プラウズは完成した映画を観るまでその事実を知らず、ダース・ベイダーの声を演じたジェームズ・アール・ジョーンズは「ベイダーは嘘をついている」と思い込んでいたという。


 我が子をダークサイドへと誘惑する父。息子はそれを乗り越え、自分自身を発見し、ジェダイとしてのアイデンティティを確立する。この父と子の関係は、神話や伝説にそのルーツを見出すことができるだろう。そして同時に、フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』(79)にも、その萌芽を垣間見ることができる。



『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(C)2024 Lucasfilm Ltd.


 もともとルーカスは、『風とライオン』(75)や『ビッグ・ウェンズデー』(78)で知られるジョン・ミリアスと共に、ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』の映画化を進めていた。だがベトナム戦争が激化していた時代背景もあり、その企画を友人のコッポラに譲り渡したのである。


 カンボジアの奥地に独立王国を築き、山岳民から神のごとき存在として崇められていたカーツ大佐(マーロン・ブランド)。彼を密かに暗殺すべく、秘密工作員のウィラード大尉(マーティン・シーン)が送り込まれる。残酷で無慈悲なベトナム戦争の現実を目の当たりにして、闇の奥へと身を潜めたカーツの姿は、皇帝パルパティーンの誘惑に屈してダークサイドに堕ちたダース・ベイダー=アナキン・スカイウォーカーと重なる。カーツを殺害することでその闇を追い払おうとするウィラードは、父親を暗黒面から救い出そうとするルーク・スカイウォーカーそのものだ。


 ダースは「Dark lord of the Sith」の略称であり、ベイダーはオランダ語で“父”を意味する。文字通り、黒い父親。その巨大な存在を乗り越えることで、主人公は初めて試練に打ち勝つ。「『スター・ウォーズ』シリーズは、全編を通して「父と子の物語」と読み解くができるが、その嚆矢となったのが『帝国の逆襲』なのである。





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