2024.05.13
対照的な女性ふたりが繰り広げる破茶滅茶な対決
ジュリア・ロバーツが演じるジュリアンは、自立した生き方を貫く27歳の料理評論家。いわゆる「女性らしい」格好が苦手で、グレーやベージュのスーツパンツにヒールなしの靴がトレードマーク。恋愛相手はいても、特定の相手に入れ込まない。大学時代にマイケルと別れたのも、真剣な関係に踏み込むのが怖かったからだ。一方のキムは、富豪の親を持ち、大学で法律を学ぶ20歳の大学生。ブロンドの髪によく似合うパステルカラーのミニスカートや小物を身につけ、元気よくスポーツカーを爆走させる。恋愛には一直線で、結婚後は大学を辞め、旅回りが基本のマイケルについていくことを決めている。
人当たりはいいが、感情を素直に表すのが苦手なジュリアンと、思ったことをすぐに口にするキム。ふたりは、見た目も性格も見事なほどに対極的な女性だ。その事実が、この映画を何より魅力的なものにしている。1990年代を代表するラブコメの女王ジュリア・ロバーツと、本作を機に大きな注目を集め、その後2000年代のラブコメの象徴的存在となったキャメロン・ディアスの対決と和解こそが、映画の主軸になっていくというわけだ。
『ベスト・フレンズ・ウェディング』(c)Photofest / Getty Images
ジュリアンの結婚妨害計画は姑息なものばかり。手始めとばかりに、カラオケが大の苦手だというキムをカラオケバーに連れていき、マイケルの前で無理やり歌わせる。計画通り、キムの壊滅的な歌声に、マイケルは驚き気まずげな表情を浮かべる。だが、他の客に毒づかれようが、笑いものにされようが、震えながら健気に歌い続けるキムのひたむきさに、だんだんと場の雰囲気が変わり始める。最後まで歌い切ったとき、店の客はみな彼女の熱烈なファンになっていた。もちろんマイケルもそのひとり。実際、このシーンを演じたキャメロン・ディアスは人前で歌声を披露することに恐怖を感じていたそうだが、その緊張感が、伝説となる名シーンをつくりだした。
ジュリアンの計画は、天性の明るさをもつキムにはまったく通じないが、一度の失敗で諦める彼女ではない。大学を辞めるキムに同情するふりをして、「マイケルがあなたの父親の会社で働き出せばすべて解決するのに」とそれとなく悪知恵を伝授する。だが、ジュリアンの企みはなかなか実を結ばず、計画遂行のため、彼女はさらに過激な行動をとりはじめる。そうするうち、観客の視線は徐々に変化する。ジュリア・ロバーツを叶わぬ恋に奔走する悲劇のヒロインとしてではなく、いじらしい恋人たちを邪魔する悪役として見るようになっていくのだ。